吾妻鏡 藪本勝治 中公新書 ISBN978-4-12-102814-3 1,000円+税 2024年7月
吾妻鏡は漢文の編年体という形式をとっていて、あたかも「正史」のようだが、その実態はほとんどフィクションと喝破する。その目的は、北条氏の政権を正当化するというもの。中国の正史のように、あとを継いだ王朝がまとめた歴史(これでも前王朝の非をただす現王朝という目的) ではなく、現在進行形の政権がまとめたので、当然といえば当然。
吾妻鏡の最大の謎である「空白の3年間」(頼朝の死の3年間の記録がない)ことについては、コラムで諸説を紹介しつつ、この本では現存しているものについての考証にとどめるという筆者の立場を述べている。
筆者は私立灘中高の現役教員、1983年生まれということなので、執筆時は30代後半、教員として一番忙しい時期に、こうした著作をまとめるのは大変だったと思う。
2024年8月記