在来植物の多様性がカギになる 根本正之 岩波ジュニア新書 iBN978-4-00-500969-5 880年 2023年6月
筆者は「日本の自然」と「日本らしい自然」は違っていると考え、「日本らしい自然」を守ろうと活動もしている人。「日本らしい自然」とは人の手が入った日本の自然こと、つまり里山のようなものらしい。また、堤防もそうだ。半自然というべきもの。
日本列島は約1,500万年前にユーラシア大陸から分離したということは、2億5000万年前にできたとされるパンゲア大陸の歴史の内のわずか1/17の歴史しかない。じっさい日本列島“固有”といっても、大陸の近縁種とは亜種レベルの違いのものも多い。
さらに「日本らしい自然』の一貫をなす谷戸の里山、つまり水田も周りの風景は、せいぜい弥生時代以後の数千年の歴史しかない。とうぜん持ち込まれたイネ、それに付随した持ち込まれただろう様々な植物は外来種とはいわない。大勢の渡来人と共にこうして持ち込まれた植物が、「日本らしい自然」を作っている。弥生時代にはオオバコ、ナズナなど、江戸時代までにはヒガンバナ、シロツメクサなど。
渡来人たちがきた時代よりは遙かに人と物の往来が盛んになっている今日、それに付随する動植物の移動を完全に防ぐことは難しい。そしてこうした動植物たちもまた、将来的には「日本らしい自然」の一翼を担っていくものだと思う。まあ、筆者が外来種=悪という単純な立場はないのが救いだが。下手すると、排他主義的になりやすい題材なので。
日本人の感性(優れた特性?)として、和辻哲郎や寺田寅彦の日本人論を持ち出しているがどうなのだろう。そしてこれを根拠に、「日本らしい自然」を守ろうとするのは無理があると思う。その日本人が現在の状態を作っているのだから。
野草類の絶滅の最大原因は「開発」ではなく「盗掘・乱獲」と書いた直後に、こうなったのは「日本列島改造計画」といっていて、本人も混乱している。
表紙(中にも出てくる)のような、根の状態までも描いたのは珍しいらしい。また、p.73ページには在来タンポポと外来タンポポの見分け方の図が出ている。この図にもあるように、最近は雑種(中間的形態)のものが多くて見分けにくくなっている。これも自然だと思う。
2023年7月記