ユダヤ人は、いつユダヤ人になったのか

ユダヤ人は、いつユダヤ人になったのか 長谷川修一 NHK出版 ISBN978-4-14-407307-6 1,000円+100円(税) 2023年12月

 古代ユダ王国と古代イスラエル王国時代と違う王国時代から、同じ民族という自覚はあったようだ。そして常にまわりの強国からの圧力を受けていた。そして紀元前600年ころ、2回にわたって新バビロニア王国によって、大勢のユダ王国住民が首都バビロンや周辺に強制連行・移住させられた歴史的事件。数世代後に戻ることを許された人も、すでに故郷の地には別な人たちが住んでいた。バビロニアに残った人たちもいた。

 この間に排他的一神教(ユダヤ教)が確立していく。この排他性がユダヤ民族のアイデンティティを確立すると同時に、他からは排除される原因にもなる。ユダヤ教を出発とするキリスト教からも。

 と、古代史を中心に解説は進む。だが、なぜ多くのユダヤ人がヨーロッパに住むようになったのか、そこでどのように暮らしていたのか、どう思われていたのか、などナチス・ドイツのホロコーストや、ソ連も含む差別的な扱いが生まれたのはなぜかなどの言及がほとんどない。

 つまり、自分たちのアイデンティティがどう作られて維持されてきたのかだけではなく、非ユダヤ人からのユダヤ人というイメージがどう形成されたのか、それがどう差別と反感につながっていったのかも重要だと思う。この本ではあっさり「アイデンティティ保持システムが迫害の原因」としているが、それはそうだけど、そこの掘り下げがもっと必要なのではないだろうか。

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2024年2月記

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