ウイルスとは何か 長谷川政美 中公新書 ISBN978-4-12-102736-8 900円 2022年12月
ウイルスとは何かという「定義」問題については、あっさり「ウイルスには細胞がないので、普通は生物とされない。〜略〜進化するという意味では、ウイルスは生物と何ら変わらないものであるように思える。」として、これ以上は深入りしていない。というか、深入りしても意味はないということだと思う。生物−無生物(非生物)の境界は曖昧(つまりある意味定義次第)ということがわかったことが、ウイルスの発見の意義だったともいえる。
この本ではあとは、ウイルスの起源と歴史、ウイルスの種類、病原ウイルスの起源(COVID-19についてはキクガシラコウモリ(センザンコウを経由してもその元はキクガシラコウモリという説)などの解説になる。キクガシラコウモリは密集団を形成するので、ウイルスが広がりやすいらしい。COVID-19以外の病原性ウイルスのキクガシラコあるらしい。
ウイルスの起源についても、生命発生前の姿、細胞が退化した、ゲノムが独立したという3つの考え方があり、よくわかっていないようだ。
この本では全体としてウイルスと生物、ウイルスとヒトの共進化を解説するものになっている。
最近、腸内細菌の有益性が強調されるようになってきたが、ウイルスも体内ウイルスとして重要な役割を果たしているのかもしれない。一部の細菌(バクテリア)が病原体となるように、一部のウイルスが病原体となっているだけで、大部分は有益とはいえないまでも、無害という存在なのだろう。毒性が強く、宿主がウイルスを拡散する前に死んでしまうようになっては、そのウイルス自体にとっては非常に不利なことはあきらかなので。
2023年2月記