唐−東ユーラシアの大帝国 森部豊 中公新書 ISBN984-4-12-102742-9 1,100円 2023年4月
長い中国史の中、唐だけに的を絞った唐の歴史。中公新書はこれまで、殷、周、漢、南北朝に続く本。西、北からの遊牧民の圧力、また出自が遊牧民である唐の人材、さらにはチベット族との攻防、そして祭壇範囲を支配したときには、とうとう西の大帝国ペルシャとの直接対決など。長安はたぐいまれな国際都市だったようだ。日本からの留学生(阿倍仲麻呂や空海など)も多かった時代。
ただ、一つは皇帝の女性関係(姻戚が力を持つ)、もう一つは宦官、これが帝国の土台を揺るがしていく。中国唯一の女性皇帝である則天武后の「周」の前と後で、そして、安史の乱(安禄山・史恩明→史朝義)の前と後で帝国の性格も変わったようだ。
チベット帝国の圧力も強く、一時は長安も占領されたほど。
当時の長安には仏教、道教ばかりではなく、キリスト教徒、イスラム教徒、拝火教徒も住んでいた、宗教的にも国際都市。この本では、文化的な話、李白と杜甫などの文化人については出てき来ない。
この本は、“漢民族の唐の歴史”だけでなく、周辺地域(この本では唐を含めた東ユーラシア)との人的交流(ある意味人材の供給源)、経済的交流(それを担ったソグド人(安禄山のルーツ)、さらにはもちろん武力対決などが唐を作って、また滅ぼしていったということも含めて書いてある。
地図とか系図とか、複数のページで参照しなくてはならないので、まとめて欲しかった。
序章 唐の歴史をどう見るか
第1章 東ユーラシア帝国への飛翔 7世紀
第2章 武周革命 7世紀後半から8世紀初め
第3章 転換期 8世紀前半〜中葉期
第4章 帝国の変容 8世紀後半から9世紀前半
第5章 中国型王朝への転換 9世紀前半〜中葉
第6章 次なる時代へ 9世紀後半から10世紀初め
終章 世界史の中の「唐宋変革」
あとがき
文献案内/図版出典
唐 関連年表
索引
2023年5月記