旅する地球の生き物たち ソニア・シャー 夏野鉄也訳 築地書館 ISBN978-4-8067-1642-6 3,200円 2022年10月
題名から、生物の歴史における進化と拡散の話かと思ったら(表紙でもそれを謳っているし)、内容のほとんどが難民・移民の話だった。人類発祥から拡散の話は少し出てくる。
筆者自身がインドからアメリカに渡った移民を親に持つということ、トランプ政権下のアメリカで書かれたこと(トランプに危機感を持っていること)、こうしたことが背景にあり、難民・移民に対する非難・恐怖は根拠がないこと、難民・移民を受け入れることこそが人類の発展に寄与すると主張する。
生物についても、在来集=善、外来種=悪という二元論でもないことも。
それらは共感する部分もあるが、何しろ修辞的部分が多く、つまり話の要点が分かりづらく、もっと簡潔に書けばいいのと思うところが多い。本文340ページの大部だが、要領よく書けば半分程度になると思う。また例えば、津波を予知したゾウとか、噴火を予知したヤギとか、はっきりとした根拠がない話をぽこぽこ入れるのも気になる。
なお原題は The Next Great Migration (The Story of Movement on a Changing Planet)。
2023年4月記