占領期カラー写真を読む 佐藤洋一・衣川太一 岩波新書 ISBN978-4-00-431964-1 1,140円 2023年2月
敗戦後のアメリカ軍支配下(占領下)にあった時代のカラー写真を発掘する。当時のモノクロ写真を、現在の画像処理技術でカラー化したのかと思っていたが、もともとカラー写真で撮られたものだった。「ヒギンズさんが撮った京王帝都電鉄」で、米軍関係者は当時の日本人ではなかなか入手できなかったカラーフィルム(コダカラー)を、かなり自由に使えたことは知っていたが、それと結びついていなかった。
当時の写真は、オフィシャル(軍関係)、プレス(報道関係)、パーソナル(軍人とその家族)があるという。実際のカラー写真は75ページから138ページに渡って掲載されている。かなり退色しているのもあるが、鮮やかな色が残っているものもある。
この本はこうした写真そのものを解説するのではなく、どうやって埋もれている写真を集めていくのか(アメリカの公文書館に探しに行ったり、ネットオークションで出てくる買ったり)、それをどう研究するのかという、「占領期カラー写真学」入門という内容になっている。
驚いたのは、あの(旧)統一教会との縁が深いというダーティなイメージの細田博之衆議院議長が、通産官僚時代にアメリカ留学していたときに、 下宿先のスティール夫妻が撮影した占領時代の日本の写真をたまたま見て、「あと10年は待てない。なぜなら多くの撮影者がこの世を去り、写真が散逸してしまうから。」と思い、毎日新聞と協力して、スティール氏を中心に1万枚の写真を集めた、その結果が「毎日グラフ別冊 ニッポン40年前」(1985年)というエピソードだった。その頃の思いを思い出して欲しい。
2023年4月記