「利他」の生物学 鈴木正彦・末光隆志 中公新書 ISBN978-4-1-102763-4 880円+税 2023年7月
結局利他といっても、自分自身の利益になるものが多いという当たり前の結論。つまり生物は、目的のために手段を選ばずではなく、逆に手段のために目的を選んでいるのでもなく、目的のために手段を選んでいるという実態。
この本ではいろいろな共生の話が出ていて面白い。また、究極的には真核生物への進化の話につながっていく。また、ヒトと腸内細菌の共生の話なども。
※ 真核生物の起源・共生の話は1971年ころ、地球物理の教授に聞いた。今から思うと恐ろしいほど幅広くから情報を集めていた人だった。今では共生説提唱者リン・マーギュリスの方が、夫だった天文学者カール・セーガンよりも有名かもしれないし、たしかに科学的業績は彼女の方が大きいのかもしれない。
一般の人向けに、意識的に軟らかく書こうとした意図はわかるが、時折、進化を生物が合目的に行ったかのような表現がいくつか見られる。
目次
序にかえ 生物は利己的か、利他的か
第1章 生物の特徴とは?
第2章 ミトコンドリアと葉緑体を飼いならす−細胞内共生
コラム1 原生生物の多彩な生活
第3章 共生のルーツは「盗っ人」だった?−盗葉緑体と盗毒
コラム2 アリと手を結んだアブラムシの「安全保障」
第4章 依存しきって生きるには−口を持たない深海生物の暮らし
コラム3 シロアリ塚巨大化の謎
第5章 昆虫と植物の華麗な騙し合い−WInWinの関係の裏側
コラム4 光合成をする不思議な動物
第6章 大事な共生相手を攻撃する理由−植物と菌のコミュニケーション
第6章 「超生命体」としての私たち−ヒトと腸内細菌の共生から考える
終章 進化と「利他」−生命のドライビング・フォース
あとがき
主要参考文献
2023年9月記