日本の人種主義

日本の人種主義 河合優子 青弓社 ISBN978-4-7872-3519-0 1,800円+税 2023年4月

 “日本人”は「単一・単成民族」という意味がわからない神話を信じている人がそれなりにいるという現実、もちろんそれは”アイヌ人”や”琉球人”を忘れているということばかりではなく、あいまいな”日本人”というくくり方。筆者は「名無しの民族主義」という言葉を使っている。人類学的な”日本人”の起源ついてはこちらを参照

 この本では、フランスの社会心理学者アルベール・メンミ(複雑な出自)の「現実の、あるいは架空の差異に、一般的・決定的な価値づけをすることであり、この価値づけは、告発者が自分の攻撃を正当化するために、被害者を犠牲にして、自分の利益のために行うものである。」という人種主義の定義が紹介されている。

 ヘイトスピーチをする人たちは、それを漫画的に体現している。でも、彼らを跋扈させる一定の基盤があるということも現実だと思う。どうしても”日本人は優れた民族・人種”と思いたい人たちがいて、それはほかを見下すという態度に繋がっている。

 表紙にトランスナショナルという言葉も出てくる。”ナショナル”は民族も指すし、国家も指す。わずか20万年程度の人類史(ホモ・サピエンス史)のなかで、民族とか国家とかわからないものができてきた。そのホモ・サピエンスでさえ、ネアンデルタール人・デニソワ人も血も混ざっているということがわかってきた今日、単一・単成民族なんてそもそもあり得ないのに。まさに、トランスナショナル(インターナショナル)が本来の立ち位置のはず。でも、厳しいという現実があるのも事実。

 そもそも、かつて日本で唯一の前衛党と名乗っていた党ですら、「民族民主統一戦線」とか「民族民主革命」とかいっていた。”民族”(あるいは”人種”)なんて科学的(生物学的)な概念ではないのに。”民族”という言葉は根が深い、一部の人にとっては甘い言葉。

※ 苦しい弁明。2007年以降用語としては使っていないが趣旨はか変わっていないそうだ。

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-11-29/ftp20071129faq12_01_0.html

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2023年7月記

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