日本人になった祖先たち  

日本人になった祖先たち 篠田謙一 NHKブックス ISBN978-4-14-191255-3 1,300円 2019年3月(2020年12月第5刷)

 筆者は国立科学博物館人類研究部長、2007年版を最近のDNA解析結果を踏まえた大改訂版。前半は人類史(人類拡散史)、後半が日本人史。2

 従来の縄文人(狩猟採集民)→渡来人(弥生人、農耕民)、弥生人に圧倒された縄文人の形質はアイヌや琉球により多く残っているという単純な図式ではなく、縄文人といっても単純ではないこと、弥生人も多様だったことを明らかにする。

 筆者が繰り返し述べているのは、日本人は“単一民族”(もともと“民族”という概念は人類学にはないし)ではなく、つまり集団としての日本人は成立の時点から単系的に繋がっているのではなく、そのルーツは大陸に散らばって存在していて、様々な経路で日本にたどり着いてきたこと、またグローバルな人の移動が盛んになってきた今日、ますますいろいろなルーツを持つ人が増えていくだろうということである。そしてさらに、現生人類はみなほとんど同じDNAを持っていることの認識こそが、世界の平和に大切であると締めくくる。この姿勢には共感する。

※ 目次は裏表紙の帯を参照。

※ 同じNHKブックスの「魚食の人類史 島泰三 NHKブックス」は、こうした新しいDNA解析の成果をなぜか無視しているようで、ネアンデルタール人=ホモ・エレクトスの生き残りなどといっている。われわれのDNAの中にネアンデルタールのDNAが混じっているということは、現生人類と混血可能かつその子供も生殖可能、つまり同じ種だったということはあきらか。正統な学説がつねに正しいわけではもちろんないが、だからといって異端が正しいということにはならない。

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2023年4月記

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