日本インテリジェンス史 小谷賢 中公新書 ISBN978-4-12-102710-8 900円+税 2022年8月(2022年9月)
戦後日本のインテリジェンス・コミュニティ(筆者によれば情報を扱う行政組織や機関を包括する総称、その情報は国家の政策決定や危機管理のためのもの)、とくにその組織の変遷をまとめたもの。
こうした組織が必要であるという前提で、その非効率(縦割り)や、機密情報の保護の問題が多く書かれている。だから、具体的にどのようにしてどのような情報を集めているのか、例えば毎年巨額の予算を消化している情報収集衛星とか(文科省予算の科学技術費全額と同じくらいの費用をかけている内閣予算の情報収集衛星)、あるいはどういう個人を対象としてどのように監視しているのかということは、電波傍受以外ほとんど書かれていない。また、政府の政策決定時において、具体的に集めて整理された情報がどう使われているのかも書かれていない。
つまり、具体的なことは「機密」(何が機密なのかも恣意的)なので、よくわからない。だから何か不気味な組織という印象もある。突き詰めると、国益とは何かとか、あるいは国家とは何かという問題になるのだろう。
筆者はどこかで見たことがあると思っていたが、NHK「英雄たちの選択」でときどき見る人だった。
2023年4月記