暗い夜空のパラドックスから宇宙を見る

暗い夜空のパラドックスから宇宙を見る 谷口義明 岩波科学ライブラリー ISBN978-4-00-029722-6 1,400円+税 2023年10月

  無限に広い宇宙に無限の恒星が存在していたら、夜空は星に埋め尽くされて無限に明るいはず(※)、でも現実の夜空は暗いというパラドックス。じつはこれはオルバースがいい出したことではなく、その前にもこの問題に言及し、その回答を考えた人がいたということから始まる。

※ 宇宙が無限で、銀河が均一に分布しているのなら、一つの銀河から来る光は距離の2乗に反比例、一方、銀河の数は距離の3乗に比例するから、両方考えると、夜の明るさは距離に比例する、だから夜空は無限に明るい、でも夜空は暗いというパラドックス。

 普通の回答は、宇宙が有限である(からその中の恒星の個数も有限)というものだが、この本では実際にその有限である宇宙に何個の恒星(何個の銀河)があるかを見積もって、とても夜空を明るくするには星の数が足りない(宇宙に存在している物質が足りない=エネルギーが足りない)、空を覆い尽くすことはできない、だから夜の空は暗いということを説明している。

 自分のWebでの説明は、「宇宙地球科学」(杉本大一郎、浜田隆士、東京大学出版会、1975年)に依拠しているが、大きな修正はしなくても良さそう(原著では当時わかっていた銀河の密度と宇宙の広がりから夜空の明るさを比較して、観測だいたい合っているという議論だった(この部分は杉本大一郎))。宇宙は有限の歴史という部分はまずいかもしれない。

 あと、この本では全天が星で埋まったらそれ以上は明るくならない(夜空は無限に明るくはならない)ということも述べていて、たとえば太陽が全天を覆うとしたら太陽は21万個で足りる、つまり全天を太陽が覆い尽くせば(背景の星の光は遮られるので)その明るさにしかならない(今の太陽の明るさの21万倍)、つまり有限の明るさにしかならないともいっている。これは確かにそうだと思った。

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2024年2月記

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