クジラ捕りが津波に遭ったとき 森田勝昭 名古屋大学出版会 ISBN978-4-8158-1104-4 3,200円+税 2022年11月
あの2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)による津波で、根こそぎ流されてしまった東北石巻の鮎川漁港。ここは日本に五つある沿岸捕鯨基地の一つだった(あとは北海道の網走、釧路、房総の和田、紀伊の太地(たいじ)、この本ではさらに函館)、捕鯨対象はおもにツチクジラ、ほかにゴンドウクジラなど)。鮎川は捕鯨に頼ってきた港なので、それがすべて失われてしまった。
筆者は、そうした捕鯨に関わってきた人々が、その後再開に向けてどういう思いで、どうやって来たのかを、船員、船長、社長などの様々な立場の人たちに取材していく。また、クジラ肉が鮎川の人たちはどういう意味を持っていたのかも、捕鯨再開の過程で浮き上がってくる。
他の捕鯨基地のク捕り捕りたちは、ライバルではあるが、こうしたときに助け合うという関係でもある。鮎川の捕鯨会社は、和田の外房捕鯨などの「多角経営」を見習おうとしているようだ。
目次は裏表紙の帯を参照。
以下、支離滅裂な感想。
鯨食は日本の“文化”とかいっても、1950年代〜60年代のころと違って、普通の人はあまり食べなくなっているのではないだろか。日本は2019年に国際捕鯨委員会(IWC)したあと、商用捕鯨(イワシクジラ、ニタリクジラ、ミンククジラを対象とする捕鯨)が復活したが、かつてのような大船団方式で南氷洋まで出かけるというような商用捕鯨が復活したわけでもない。
日本捕鯨協会のホームページも貧弱。紀伊の太地の博物館の資料もすごく古いものだった。これでは、反捕鯨団体の宣伝攻勢にはに太刀打ちできないと思う。
※ 反・反捕鯨映画「ビハインド・ザ・コーヴ」も、反捕鯨運動の全部がアメリカ政府の“陰謀”という酷いものだったし。
さらに「調査捕鯨」よって安定した操業ができていたが、IWCを脱退したことでこれもなくなってしまったという矛盾も露呈する。また、価格面でもアイスランドから肉質のよいナガスクジラ肉が輸入されたために、販売面も困難になっていく(一時コロナのために輸入がなくなったが今年から再開されるらしい)。
沿岸捕鯨のおもな対象であるツチクジラも減ってきているようだ。房総和田の外房捕鯨の去年は極端な不漁だったという。自主規制の枠にも届いていない。和田港でクジラの解体があればまた見に行って、ついでにクジラ料理専門店「ぴーまん」にも寄ってみようと思って、「ぴーまん」のホームページを見てみたら、今年1月13日に火事になり、再開のめどが立たないので廃業とのこと、ショック。
渋谷の「元祖くじら屋」が、もともとの場所から移転して久しい。でも、土日祝にはランチもやっているようなので、今度尋ねてみよう。和田甫でクジラを食べるところはなくなってしまっているし(クジラのタレ(ホエール・ジャーキー?)を売っているお店はある)、こちらが頼り。
クジラは食べるだけでなく、見るのも大好きなので、沖縄か、小笠原でホエール・ウォッチングをやってみたい。マウイ島でのホエール・ウォッチングはいまいち納得できなかったので。
ヒゲクジラは、食物連鎖の多くの段階を経た最高位のマグロ・カツオなどの大型高級魚と異なり、プランクトン→クジラと2段階なので、牧草・穀物→牛・豚と同じく食肉生産の効率がいい。A.C.クラークの「海底牧場」みたいなものができたらいいのかもしれない
2023年2月記