関東軍

関東軍−満州支配への独走と崩壊 及川琢英 中公新書 ISBN978-4-12-102754-2 920円+税 2023年5月

 関東軍についてはこれまでもいろいろと語られてきた。そうした成果も踏まえた一冊。政権(本土)の意向を勝手に妄想忖度、そして独断の戦線拡大。結果がよければ政権(昭和天皇を含む)は結局容認。こうしたことを繰り返すうちに、失敗しても(ノモンハンなど)、情報を正確に挙げない、政権(昭和天皇を含む)もきちんと批判できない。戦国大名並みの謀略(口実作り)→軍事行動→戦線拡大→持てあますという結果。世界戦略なき、極地戦術のみの行動拡大(これすら行動後の総括もできない)、これは満州に限らず、旧日本軍の特徴でもある。

 「下克上」を始めた石原莞爾も、みずからが始めた「下克上」の対象となる。彼は変な人物で、みずから唱えた日満(蒙漢朝) 一体(平等)という理想があったようだ。でも、実際は?

 戦後、平和を愛する好々爺というイメージを植え付けることに成功した昭和天皇も、戦前〜戦中は大権(→最終責任)を持っていたわけだし、実際に軍人たちと軍議にも参加していたわけだし(軍人たちに騙された平和主義者ではないし)、最後の最後まで幻想でしかない「三種の神器」に固執していたわけだし(これについては「『戦前』の正体(辻田真佐憲、中公新書)」を参照)、うまく立ち回って“天皇家”を存続させることに成功した結構したたかな人だと思う。

 この本は、「関東軍」という題名の通り、関東軍の歴史を、それを担った実体である個々の高級軍人の考え・行動を追うものとなっている。なので、その周辺、「満州経営」の実験実践者である昭和の妖怪岸信介などの高級官僚、あるは不思議な組織満鉄、さらには甘言に釣られて満州に渡った人々などについては触れられていない。

 登場人物がやたらと多いので、ばらばらに紹介されている主要人物の一覧があると読みやすくなると思う。とても、これだけの人物を把握するのは無理なので。あと、全体の流れを掴みための略年表も欲しい。

 

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2023年7月記

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