江戸の女子旅

江戸の女子旅 谷釜尋徳 晃洋書房 ISBN978-4-7710-3700-7 1,800円 2023年2月

 江戸時代の女性旅。いくら江戸時代は治安がいいといっても、この本で紹介されているのは、男性(家族(夫や息子)、男性のグループに混ざる、あるいは男性を護衛・荷物持ちにつける)と一緒の旅というもの。彼女ら、あるいは男性同行者が残した日記から当時の旅を考察する。
※ 江戸時代、町人の女性・子供の箱根温泉旅には、町火消しの頭領が付き添うのが慣例だったという話を聞いたことがある。護衛(トラブル防止)として、また子供が歩けなくなったとき背負うとかの役割。

 旅をした女性は、藩主の妻(参勤交代が緩んだ後、江戸から領地に戻る)や、武士の妻、商人の妻、名主や農民の妻、神主の妻、さらには芸人もいる。ただ、今みたいな女性だけ、あるいは女性の一人旅はこの本には出てこない。あまりいなかったのだろう。

 リッチな旅としては秋田の裕福な商人の妻が151日間の旅で30両(約900万円相当)というものもある。これは例外としても、1ヶ月2両程度の旅費が目安だったそうだ。1両は30万円程度、大工の日収が500文(50円弱)、1両は6300文なので、かなり余裕がある家でないと旅費は工面できない
 もちろん当時は徒歩の旅なので、1日20 km〜30 kmはあたりまえ、1日50 kmとか、60 kmという場合もある。ほぼ本州のほとんどを回ったようなものもある。女性は男性のように、裾をからげることができないので大変だったと思う。

※ 松本清張の最初(?)の恋愛小説という「波の塔」(1960年)では、ヒロインが深大寺や天文台、さらには多摩川まで(さすがにここはタクシー利用)、しかも道路も整備されていない時代に、和服で歩いていた。1960年代でもそうだから、江戸時代の人なら時代ならこの程度歩くのは平気だったのかもしれない。
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 熊野や箱根の石畳の通過が大変だったということも書いてあった。石畳は雨が降ってもぬかるむことないが、実際に歩いてみると、濡れた石畳は滑って大変、とくに下り坂が恐いのはこの本でも書かれているとおり。

 ただ、なんといっても大変なのが関所の通過。とりわけ「出女」(江戸から外に向かう向き)の通過は大変。公式には通行手形(身分証明書)と関所手形(ビザ)が必要。さらにボディチェック(もちろん女性担当者)もある。だから、結構「関所破り」も行う必要があり、それは宿屋が斡旋してくれた(有料)、つまりそういうビジネスもあったという。
 バイタリティのある女性はいつの世でもいるという実感。神社仏閣を回るだけでなく、風光明媚なところ、そして飲食、さらには観劇などを旅先で楽しんでいる。

 筆者は男性で、日体大大学院出身、専門はスポーツ史だそうだ。確かに当時の旅はある意味スポーツだったのかもしれない。

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2023年5月記

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