幕府海軍

幕府海軍 金澤裕之 中公新書 ISBN978-4-12-102750-4 820円 2023年4月

 幕末から急ピッチで軍の近代化を急いだ徳川幕府。海軍も欧米の軍艦を直接購入したり、人材を招いたり、留学生を送り出したりして急速な充足を図る。当然、同じく軍の近代化を図る諸藩を圧倒する武力を保持することになる。

 だが世の流れは、もう武力だけではそれを変えることは出来ない時代になっていた。武力だけ近代化しても、指揮命令系統が追いつかず前時代的にものが残っていたとしても、それは諸藩も同じだっただろうから。

 最後のあだ花が榎本武揚の「蝦夷共和国」(この本の筆者は"共和国”は否定して「蝦夷政権」)。

 だが、明治政府下の海軍の人材上では、上の榎本武揚ほか、幹部クラスの30%を旧幕臣が占めているという。旧幕府の政策が、明治以後の急ピッチな軍備拡大の基礎を築いていたといえよう。

 実際、1922年(1968年明治政府樹立から54年)で最初の空母鳳翔、これを含めて第二次大戦前までで空母6隻、大戦中にさらに20隻以上という異常なまでの拡張。例えばあの軍事大国中国(北京政府)でさえ、最初の空母は1949年建国から63年たった2012に最初の一隻が就航(ウクライナ軍のお古を改造)、情報が錯綜して確かではないが、現在でもまだ数隻しか就航していないと思われる。旧日本が海軍を含めて異常な軍事大国だったことになる。

 この本の筆者は現役の幹部自衛官(防衛大学准教授)なので当然だが、外交とは「棍棒を携え、穏やかに話す」という立場の人

目次
まえがき
序章 日本列島と海上軍事 古代〜18世紀
第1章 幕府海軍の誕生 19世紀初頭〜1959年
第2章 実働組織への転換 1860年〜1863年
第3章 内戦期 1864年〜1868年
第4章 解体、脱走、五稜郭  1868年〜1969年
終章 幕末から近代、現代へ
あとがき
参考文献

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2023年5月記

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