宇宙開発の不都合な真実

宇宙開発の不都合な真実 寺薗淳也 彩図社 ISBN-978-4-8013-0620-2 1,540円 2022年10月

 この本は日本の宇宙開発を客観的に見直そうというもので、その姿勢に共感する。たとえば「第10章 比べてわかる日本の宇宙開発実力」、「日本は宇宙開発レベルは中くらい」という評価は、これまで日本の宇宙開発にかかわってきた人なので説得力がある。

 第2章の06「リアル下町ロケットの厳しい現実−町工場の技術を信頼しきるのは危険」もその通りだと思う。何か、これが「ものづくり日本」を象徴するものだという報道・評価が多いので。

 第4章の17「アルテミス計画の軍事的意味」も大切な視点だと思う。無批判にこの計画に参加することがいいことのような雰囲気を感じるので。

 賞賛されたはやぶさ(初号機)、はやぶさ2が、「なぜ『はやぶさ』だったのか」かが、第3章16「国民の理解を得られず偏った宇宙技術−国産ロケットの打ち上げ失敗に国民が反発」にある。つまり選択肢がこれしかなかった。

 火星の衛星からのサンプルリターン計画(MMX計画)についても、第3章12のなかの項「はやぶさ成功の功罪」で言及している。もう小惑星からのサンプルリターンは、日本だけのお家芸ではないという現実を見つめることが必要だと思う。

 もう一つ、第4章16「予算も人員も情報収集衛星に偏る−国民が知らない間に日本最大のプロジェクトに」も重要。科学・技術衛星は文科省予算、情報収集衛星は内閣府予算、はやぶさ2の総事業費12年間で289億円の2倍以上のお金を、情報収集衛星は毎年使っている。で、何をやっているのかは一切明らかにされていない。
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/pdf/r02_suii.pdf?fbclid=IwAR3TpY_xzCIhpp5m0meekMJUMurYoIvRVV-bCMQrLpYkpIPV1E7xXFYy59U

 この本であと欲をいえば、たぶん筆者も関わったことがあるかもしれない、宇宙科学研究所(現在は宇宙開発事業団と合同して宇宙研究開発機構(JAXA))のルナA計画のお粗末な頓挫の経緯も書いて欲しかった。
https://www.jaxa.jp/projects/sat/lunar_a/index_j.html


 目次は裏表紙を参照。

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2022年11月記

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