帝国日本のプロパガンダ 貴志俊彦 中公新書 ISBN978-4-12-102703-0 840円 2022年6月
日清戦争期から敗戦直後まで、日本政府・軍部のプロパガンダばかりではなく、相手国のプロパガンダも紹介する。
明治期はまだ瓦版的な(錦絵的な)絵が多いが、だんだん写真、映画などとよりリアルなものへと変化して行く。絵はがきもよく使われたという。
なぜ戦前の政府のプロパガンダがあれほど民衆にも浸透してしまったのか、政府のいいなりになってしまった報道関係の会社(新聞・映画など)が政府が流す、政府に都合がいい情報だけを報じるという事態にどうしてなってしまったのか、新書という制約からか、この本ではそこまでは追求していない。まあ、戦後情報がころっとひっくり返っても、それも浸透する。戦争末期の日常生活の苦しさの現実を考えると、それまでの政府のプロパガンダはやはりおかしかったと気がついたということか。
やはり現実が大事だと思う。中国が文化大革命を収束させ、開放政策に転換したとき、当時の最高責任者ケ小平は、日本の現実、例えば若い女性が自分の車で出勤するような光景を大衆(とりわけ若い人たち)に見せて、当時の中国がいかに遅れてしまったのかを実感させたという。
今のロシアはどうなのだろう。どうしても戦前の日本の状況とダブってしまう。独立系の調査機関の世論調査でも、プーチンの支持率が80%を超えている現実、そこを前提に考える必要があると思う。
2022年7月記