新疆ウイグル自治区

新疆ウイグル自治区 熊倉潤 中公新書 ISBN978-4-12-102700-9 860円+税 2022年6月

 ウクライナの影に霞んだ感のある新疆ウイグル、その大国の狭間で翻弄され続けてきた歴史、とりわけ中国共産党の支配下になってからの歴史をまとめる。党の政策のぶれにより振り回される歴史といってもいい。そのぶれが、周辺地区でさらに大きなものになるという印象。

 習近平の父親習仲勲(文化大革命時代は過酷な経験)もこの地域に関係が深かったらしい。彼はウイグル人(いわゆる民族問題)には比較的寛容な立場だったらしい。

  でも、息子習近平は、漏れ出てくる内部文書(政府 or 共産党に批判分子が内部にいることを示す)では、「ウイグル人に容赦するな」という強権的な指導。消息を絶った著名文化人も多い。共産党から目を付けられた“不満分子”は「教育施設」の収容して、イデオロギー的な漢民族同化への強要。この本ではそれを“文化的ジェノサイド”と表現している。共産党にとってはムスリムでいる限り危険ということなのだろう。まさにいいウイグル人は非ムスリムになったウイグル人だけということか。そして“いいウイグル人”を優遇して分断。長い目で見れば、心の奥に恨みを蓄積させるだけだと思う。

それにつけても気持ち悪いのが「親戚制度」。民族融合の名の下に、強制的に漢民族を親戚としてウイグル人に貼り付ける=監視、IT技術を駆使した監視ばかりかこうした直接的な人による監視まで行っているとは。

目次
まえがき
序章 新疆あるいは東トルキスタンの二千年
第1章 中国共産党による統治の始まり 1949〜1955年
第2章 中ソ対立の最前線 1956〜1977年
第3章 「改革開放」の光と影 1978〜1995年
第4章 抑圧と開発の同時進行 1996〜2011年
第5章 反テロ人民戦争へ 2012〜22016
第6章 大規模収容の衝撃 2016〜2021年
終章 新疆政策はジェノサイドなのか
あとがき
参考文献
関連年表

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2022年7月記

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