世界の原発と核兵器

世界の原発と核兵器図鑑 ブルーノ・テルトレ 小林定喜監訳 西村書店 ISBN978-4-89013-727-5 2,200円 2015年6月

 筆者はフランス人で、国防関係の仕事についていたようだ。筆者の基本的な考えは、「原子力は”善”か”悪”かではない。それ自体はは”クリーン”でも”汚い”わけでもない。」という、どこかできいた立場、自分とはかなり違う考えだ。

 原著は2011年の出版。だから原子炉の事故については、福島第一原発については出てこない(事故については2000年まで、1999年東海村核燃料工場事故が最後)。外国の本なので、日本で使われている原子炉PWR、BWR以外の構造の解説もあるかと思ったが、原子炉の構造についてはあまり出ていなかった。とくにフランスなので高速増殖炉はあるかと思ったがそれもない。でも、”核燃料サイクル”には好意的なようだ。

 核兵器の技術的な解説もそれほど詳しくはない。ただ、筆者が「フランス戦略研究財団」勤務ということで、欧米(とくにアメリカとロシアの過剰保有)ばかりか、中国、インド、パキスタン、イスラエル、イラン、イスラエル、北朝鮮や、その他核兵器を持ちたい国についても述べられている。彼の安全保障の考え方も。でも、やはり2011年の本ということで、こうした問題を考えるには情報が古い。

 だから後の興味は、日本が海外から見てどのように評価されているかということになる。例えば、プルトニウムの保有量(日本は世界第5位)はまあそうかなという程度だったが、核燃料再処理工場として六ヶ所村が稼働しているとか、またそれ以上に反核団体として日本のそれは、原水禁・原水協ではなく、創価学会インタナショナル一つだけが挙げられていることに驚いた。

 これまでほとんど核(原子炉・核兵器)について知らなかった人にとって入門にはなるかもしれないが、ある程度知っていた人にはとくに新しい情報はないと思う。

 

sekainogenpatsutokakuheiki-01.jpg (113997 バイト) sekainogenpatsutokakuheiki-02.jpg (105784 バイト)

 

2022年7月記

戻る  home