南極の氷に何が起きているか 杉山慎 中公新書 ISBN978-4-12-102672-9 860円 2021年11月
おもに南極の氷床を研究している筆者の最新レポート。だから、氷床の説明が主ではなく、現在氷床がどのように変化しいているのか、それはどのようなことからいえるのか(観測手段・推定手段があるのか)という解説が詳しい。
結論的には南極の氷床は縮小傾向にある。が、現在の海水面の上昇に関してはグリーンランドの氷床や山岳氷河の縮小の影響の方が大きいという。逆にいえば、南極の氷床縮小の影響は今後出てくるだろうということになる。
また海水面の上昇について、海水の熱膨張の割合がかなり大きい(40%近い)。
いずれにしても、海水面が5 m上昇すると、日本の国土の3 %が水没、この3 %に日本の総人口の16 %(東京では28%、大阪では34 %)が暮らしているという。
また、氷床の縮小と日本の気象・気候との関係はほとんどわかっていないようだ。
最後にIPCC第5次レポートや第6次レポートの紹介もある。ミランコビッチサイクルが明瞭に出ている(第5次レポートの図を添付)。ミランコビッチの先見性が素晴らしいということになるかと思う。
二酸化炭素削減=化石燃料の消費をできるだけ抑える(いずれにしても後悔しない対策(IPCC第3次レポート))は追求しなければならないと思うが、これを逆手に取った原子力依存への回帰はあり得ないと思う。二酸化炭素は化学物質、放射性廃棄物は核物質、レベルが違う。
2022年2月記