森と木と建築の日本史 海野聡 岩波新書 ISBN978-4-00-431926-9 900円+税 2022年4月
木造建築の技術や、そこに使われている建材・道具についての説明ばかりではなく、そうした建材を切り出した森から消費地までの運搬、つまり流通までも考察する。中世においては、海外への輸出もあった日本も、すでに中世ころから巨大建築の心柱となるような巨木の流通は難しくなってきた。明治以後は、海外にまでその供給を求めるようになった。
その一つが台湾。
タイワンヒノキの供給場所が阿里山だった。切り出した木材の運搬のために作られたのが阿里山森林鉄路(鉄道)。一度は乗ってみたい路線。軌道幅は762
mmのナローゲージ(軽便鉄道)。ホームページはこちら。
https://afrch.forest.gov.tw/
なお、JR在来線の軌道幅は1067 mm(狭軌)、新幹線は1435 mm(標準軌)。京王電鉄など一部私鉄は1372 mm(京王でも井の頭線は1067 mm)。
目次
序章 日本の森林と木の文化
第一章 木と人のいとなみ
一 森林と人のかかわり
二 生活のなかの木材と森林の変化
三 木の特性を知る
四 木を加工する
第二章 豊かな森のめぐみ――古代
一 豊富な資源が可能にした大量造営の時代
二 産地から現場まで――どのように運ばれたか
三 適材適所の利用――各地の事例から
四 木の特性を熟知していた古代人
第三章 奪われる森と技術のあゆみ――中世
一 巨材の減少――大仏殿造営からわかる資源枯渇
二 進む利権化
三 樹種を使い分ける
四 革新的な道具の登場
五 海をわたる木材
第四章 荒廃と保全のせめぎあい――近世
一 消極的保全から積極的保全へ――資源保護の模索
二 大火がもたらした流通の変化
三 広がる樹種の選択
四 信仰を受け継ぐために――御杣山と神宮備林
五 巨材の探求と技術革新
終章 未来へのたすき――近代から現代
一 今もつづく運搬の苦労
二 木材不足から紡ぐ森林へ
三 おわりにかえて
あとがき
主要参考文献
図版出典一覧
2022年7月記