ケプラーの夢

ケプラーの夢 ヨハネス・ケプラー 渡辺正雄・榎本恵美子訳 講談社 980円 昭和47年4月(昭和51年(1976年)9月第4刷)

「ケプラーの夢」と題名にあるが、原題は単なる“(Somnium(夢))。夢は希望の意味ではなく、文字通り寝ているときに見た夢の話。ただ内容は月(レヴェニア)に行ってそこから地球(プリヴァニア)を見たり、月から見た天体の運動を見てみたりという文字通りのSF、SFというより彼の宇宙観の解説。

レヴェニアから見たプリヴァニアは大きく美しい、それが宇宙の1点に留まり、回転している。

※ 見かけの大きさの錯覚にも言及している。地平線(月平線)近くで見るときと、天頂で見るとき。

 体裁としては夢の話はわずか23ページ、それに対して彼が付けた原注が148ページもある。さらに訳者がつけた55ページもあるという恐ろしいもの。当然ケプラーの原注は地動説の立場に立った精緻なもの。

 あと、地磁気のギルバートの仕事も高く評価している。たぶん直感的に“遠隔作用の力”が太陽にもあって、それが惑星の法則を支配していると思っていたのだと思う。あと一歩で万有引力発見。その手前まで行っていた。

 ケプラー(1571年〜1630年、信長・秀吉・家康のころ)の母親は魔女の嫌疑をかけられて逮捕されるのだが(1615年)、ケプラーは自分が書いたこの本が原因と思ってしまう。たしかに、この本の主人公の母はどう見ても魔女。ケプラーの必死の尽力もあって1621年にようやく釈放される(当時魔女として逮捕されればほぼ確実に死刑(火刑))。でも、長い抑留生活のためまもなく死亡。

 この本は断捨離せずに手元に残っていた。以前読んだかもしれないが、単に積ん読だったかもしれない。しかし、カール・セーガンのコスモスTV版第3話「宇宙の調和」(1980年)で、セーガンがこの「夢」について話していたことはよく覚えていた。

 ということで調べてみたら、youtubeでコスモス第3話全編が見られることを知った。画質はすごく悪いけど、内容は今見ても素晴らしい。2/3がケプラーの話。
https://youtu.be/XO1AxPL48M4

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2022年2月記

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