人類冬眠計画 砂川玄志郎 岩波科学ライブラリー ISBN9784-00-029711-0 1,200円+税 2022年4月
この本はとても不思議な冬眠という状態、体温が氷点下以下にもなるジリス(ホッキョクジリス)や、逆に体温はあまり下げずに新陳代謝だけを下げるクマ(※)といった、動物一般の冬眠についての総合的な解説本ではなく、ふつうは冬眠しないハツカネズミの脳の一部を興奮させることによって冬眠様状態(QIH)にできることがわかったこと、さらにその延長としてヒトも想定、そしてその応用などを述べたもの。
当然ヒトを冬眠様状態にする応用として、宇宙旅行を挙げている。去年は宇宙旅行元年と騒がれ、民間人がお金を払って宇宙に出る時代がやってきたといわれた。でも、“運賃”は信じられない巨額なもの。また、火星に移住するとかも出てくるが、帆船時代に大西洋を渡って移民したのとは質が違うと思う。風という自然エネルギーで航海できたのと違い、宇宙に出て移動するためには、多くのエネルギー(=質量)を持ち出さなくてなならない。とても、旅行とか移民とか、よほどのブレークスルーがない限り、気楽にできるようなものにはならないと思う。
ヒトの人工冬眠で想定されるのは、超大金持ちの人が現在では治療できない難病にかかり、その治療法が見つかるかもしれない未来まで、巨額のお金を払って冬眠するという程度かな。
(※) クマの“冬眠”はあまり体温が下がらないので、一時はあれは冬眠ではないといわれたようですが、新陳代謝が下がるのでやはり冬眠というようになってきているようです。
2022年7月記