Dr.ニャガサキのゆるふわウイルス入門 作・Dr.ニャガサキ 画・あきのはこ 教育評論社 ISBN978-4-86624-040-4 1,100円 2021年5月
難しいことを、小学生でもわかるように簡単に書くことはとてもも難しいと思う。この本はそのことに挑戦した本。見開きの右ページが漫画、左ページが“博士(長崎慶三博士本人?)の解説(といってもこちらも平易な解説になっている)という体裁。漫画のキャラクターは、ウイルス界を代表するウイルス君(人との共存を目指す、鬼滅の刃でいうと胡蝶カナエみたい?)、ネコのニャガサキ博士(長崎慶三博士のアバター?)、アカリ(科学は苦手だが清潔潔癖症のところもあるOL)、マサト(アカリの弟の高校生)の4人?
4つの章、全48話+3つのコラムの全部読むと、ウイルスとは何か、人との関わり(病原性のものについていうと限りなき軍拡競争、でもウイルスを利用したファージ療法への期待)、ウイルス発見史など、一通りの全体像が把握できるようになっている。
現在の状況を考えると、新型コロナウイルスについてや、mRNAワクチンについての解説をもう少し詳しくしたほうがよかったかもしれない。でも、コロナ禍が収まったらこの程度でもいいのかもしれない。これも難しいところ。
で、この本の目的、できるだけわかりやすくふわっとしたものということはぎりぎりのところで成功していると思う。ただ、実際小学生くらいのことを考えると、アカリとマサトはもう一段階若くした方が(大学生と高校生、あるいは高校生と中学生)、親しみやすいかもしれない。つまり、小学生にとってOLはもちろん、高校生でもかなり大人げな存在なので(中学に入学したときは中3が、高校に入学したときは高3が大人っぽく見えた)。
あと、海の生態ピラミッド(p.50)や、生物の進化系統樹(p.54)はふつう見るものと逆向き(天地逆)で、これは筆者の専門が水圏ウイルス学だからなのかと思う。
さらに、見開き右ページの手書き風の台詞が筆者の年齢を想像させる。ルビなしの「何卒」(p.20)とか
目次
はじめに
登場人物紹介
第1章 ウイルスとはなにものか
第2章 自然界のウイルス エトセトラ
第3章 人とウイルスの関わり
第4章 いまこそ学ぼう ウイルス発見物語
主要参考資料
あとがき
あとがきのあとがき漫画
※ 主要参考資料に、参考となるWebサイトもあげられている。
2021年7月記