太平洋戦争への道1931-1941

太平洋戦争への道1931-1941 半藤一利・加藤陽子・保坂正康(編著) NHK出版新書 ISBN978-4-14-088659-5 880円 2021年7月

 半藤氏、保坂氏の名前は知っていたが、著書を読むのは初めて。加藤氏も初めて、そして加藤氏は例の政府(管内閣)による、学術会議任命を拒否された一人。この興味深い3人によるラジオでの鼎談(NHK第一2017年8月15日放送)を、保坂氏がまとめたもの。

 3人とも博覧強記、資料を見ながらしゃべったにしても、ものすごい知識量。その精緻な資料に基づき、開戦への道をたどる。

 ただ、その内容はこれまで思っていたことを裏付けてもらうことになるというもの。すなわち、将来の展望もない、客観的な情勢分析もない(主観主義的な裏付けしかなく、希望を反映した超楽観的な情勢分析)、どこで誰が決めたのかも曖昧な方針決定と無責任体制、ともかく既成事実作りが突っ走る、一度運良くうまくいった戦術に拘泥するなどなど。この本ではさらに、天皇の統帥権についても触れられている。自分自身の感想は、戦争遂行者たちも天皇(昭和天皇)も、お互いを利用し合っていたなぁというもの。

 当時の政策遂行者たちの、分断・敵意・偏見・憎悪を煽るという政治手法が現在でも使われている。例の某超大国で大統領をやった人。前首相もそうだった。自分に反対する人たちを”反日”と規定する、あたかも自分だけが日本を体現しているという(意図的)誤解。

 そして、戦前の日本の状況は、どうしても現在の中国とダブる。二の舞にならなければいいが。

※ 目次は裏表紙参照。

 

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2021年8月記

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