戦士の食卓

戦士の食卓 落合博満 岩波書店 ISBN978-4-00-061464-1 1,500円 2021年4月

 落合博満エッセー第2弾。今度は“食”の話。

 高校野球部を上級生からの暴力でやめざるを得なかったが、入った大学(東洋大学)の野球部も理不尽な上下関係、ここでも野球部を辞めることになった。そして東芝の臨時工として、社会人野球を始める(本当は野球が大好きだったんですね)。朝と昼は寮で食べられたが、夕食は自弁、安い給料だったので、給料が出た後はラーメン&チャーハンが、給料日が近づくころにはラーメン&ライスになったという。

※ プロ野球人として収入が増えたころ、府中に大きな土地を買って家を建てたかったらしい。東芝府中ではあまり嫌な思い出がなかったようだ。

 裏表紙の帯にもあるように、プロに入っても一軍に定着するまでは収入も多くない、で、ご飯に粉末ジュースの元(渡辺ジュース)をかけて食べたり、球場でカップ麺を食べたりという食生活だったという。

 こうした食生活を改善させたのが、信子夫人である。もともと偏食だった落合の食生活を、バランスのいいものへと改善し、中でも鍋料理は定番となっていく。いまでも、鍋焼きうどんが大好きで、地方に行ったら必ず鍋焼きうどんを探すという。

※ 信子夫人は食生活ばかりではなく、落合のプロ野球人との節目節目、具体的にはロッテから中日へのトレード、フリーエージェントで巨人に移籍、さらに日本ハムへの移籍、そして中日の監督就任というときに、背中を押したそうだ。この本も、1/3くらいは信子夫人の文章になっている。

 ただ、食事に関してもそのときの流行に左右されない、何々が体にいいというような話があっても、そうした説は一時的で、反対の意見もある、一つだけ取り出しても意味はない、要はバランスよい食事を心がけることだというごく当たり前のことを実践し続ける。食事も“オレ流”と言われるが、食事も、バッティングも、監督業も”オレ流“ではなく、過去の人たちのいいところを勉強して真似ているだけという。すごく一貫している。おまけに体を動かさないときは食事の量を減らすという。現役のときはシーズンオフ、そして引退してからは毎日。これもすごい。

 お酒は大好き(今は禁酒しているらしい)、呑み会も好き、でも、他人に無理強いするような呑み会は嫌い。食事会でも“食通”が、自分がいまおいしく食べているものを批判するのは興ざめするとも書いていて、ここはすごく共感する。“蘊蓄”は参考になることもあるのでまあいい、でも食事の微妙さはわからいけどおいしいと思って食べているものを悪くいわれると、本当にがっかりする。こちらは楽しみたいと思っているのに。

 紀伊の太地町に行ったとき、落合野球記念館があった。なぜここにと思ったが、この本に理由が書いてあった。でも、正直なところ、入館料2,000円でどの程度の入場者があるのだろうか、少し心配だが、別荘も兼ねているということなので、他人が心配することではないか

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2021年4月記

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