戦士の休息

戦士の休息 落合博満 岩波書店 ISBN978-4-00-025912-5 1,500円 2013年8月(2013年9月)

 あのプロ野球の、三冠王を3回もとった、監督としてもリーグ優勝を4回も果たしている(日本一も一回)落合博満の映画談義。映画好きだったとは知らなかった。

 その根っこは高校時代にあるという。中学校からエースで4番、ただ、甲子園を目指すような学校の野球部は厳しいだろうから嫌だと選んだ高校(秋田県立秋田工業高等学校建築科)で野球部に入ったものの、予想に反してめちゃくちゃなクラブ、入ったとたんにレギュラーになったため、上級生の妬みをかい、何かにつけて因縁をつけられ殴られる毎日。これが嫌になって退部しても、試合が近づくと監督から復部を頼まれ、そして試合に出ると活躍、これでさらに上級生に恨まれてということも何回も繰り返しているうちに、学校へも行きたくなくなり、当時社会人で秋田市に暮らしていた姉の家で住んでいたため、姉にそれがばれるとまずいということで、家を出た後一日中映画館にこもっていたという。当時は一回チケットを買えばいつまでも中にいられた時代。そのおかげでグレなくてすんだと本人はいっている。

※ この経験もあったためか、本人は暴力が大嫌い。中日の監督を引き受けたとき、コーチなどスタッフに絶対に選手に暴力を振るわないという誓約書を書かせたという。何しろ前任者は鉄拳制裁もいとわない星野監督。ただ、本人は暴力根絶は難しいともいっている。

 映画を選ぶ姿勢も素晴らしい。ともかく面白いということがその基準。高邁な映画評論家からの評価などは関係ない。取り上げた映画は裏表紙の帯参照。だからといって、自分の映画感を他人に押しつけることもない。すごく柔軟な人で、かつ芯が通った人だと思った。

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2021年4月記

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