連星から見た宇宙 鳴沢真也 講談社ブルーバックス ISBN978-4-06-21354-4 1,000円 2020年12月
連星を切り口に(筆者によると案内人として)、宇宙の様々なことの解説を試みる。多少、我田引水の傾向(すべてを連星に結びつける)が強い感じがする。でも、多分、一般人との交流に重きを置いているらしい、勤務先の兵庫県立大学西はりま天文台での経験が生きているのだろう、語り口は柔らかで読みやすい。p.228の元素の起源(元素が作られた場)の一覧表はありがたい。
ただ、連星を扱っているのに、三体問題(多体問題)については触れられていない。何か意図があるのだと思うが、SF小説「三体」(劉慈欣、早川書房)が話題になっているので(日経サイエンスでも特集が組まれたり、朝日の読書欄でも天体物理学者の須藤靖氏が取り上げていたりした)、解説があってもよいと思う。
あと、連星と聞いて「宇宙戦艦ヤマト」のイスカンダルとガミラス(サンザー太陽系の二重惑星)を思い浮かべてしまった散髪屋の店員さんの言葉に対して、2重惑星と連星は違うといっているが、本質的には同じものだと思う。ようするに複数の天体が互いの引力で離れずにまわり会っている状態で、その天体の質量が大きければ核融合反応が起きて恒星になるだけだと思う。「2020年宇宙の旅」(A.C.クラーク)の木星→ルシファーの世界。「2010年宇宙の旅」では少し、二つの太陽を持つエウロパで進化した生物の宇宙観も出ている。まあ、日本天文学会の「天文学辞典」でも、「2つの恒星が重力的に結合した恒星系(連星系)を形成しているもの」と、“恒星”としているので気になるのではあろうが。
https://astro-dic.jp/binary-star/
2021年1月記