猫が歩いた近現代 真辺将之 吉川弘文館 ISBN978-4-642-08398-3 1,900円 2021年6月
江戸時代から現代までのネコ(飼い猫)の歴史。江戸時代から明治期まで、すなわち養蚕が盛んだったことの飼い猫は、ネズミ対策用が主な目的で、これは都市部でも事情は変わらず、イメージは化け猫、祟り猫だったという。仕事をしなくてもいいペットとしては、明治以降の猫好き文化人(二葉亭四迷や夏目漱石など)などの影響があったらしい。
明治期には政府主導で、ペスト対策(=ネズミ対策)として、ネコを飼うことを奨励して時代もあったとのこと。ネズミ買い取り制度や殺鼠剤(猫イラズなど)もあった。ただ、それも一過的でまたネコ受難の時代。当時発足した動物愛護団体創設に江原素六が絡んでいたのにも驚いた。
第二次大戦中は毛皮資源として、供出の対象にもなったという。また、戦後しばらくまでは毛皮は三味線の用途としても需要があり、猫狩りを生業とする人もいたり、関西から東京などに遠征する猫狩りもいたという。さらに、戦争中や戦後間もないときは食用にも。
現在のようなペットとしてのネコは、高度経済成長期以降という短い歴史のようだ。餌もネコまんまからペットフードに、そのペットフードも缶詰から乾燥食(カリカリ)へと変化、飼い方も出入り自由から部屋飼いへ変化してた。それに伴い、ネコ砂の需要も。かつては5歳ネコはもう老ネコだったらしいが、現在では10歳越えは当たり前、20歳以上生きるものもいる時代になった。
ノラネコ対策して、殺処分を保護団体も推奨していた時代もあったという。“猫島”として現在人気の離島のネコにもさまざまな歴史があった。
本格的な「ネコブーム」は1970年代後半、「猫の手帖」の創刊が1978年ということだ。かつて庶民が飼っていたペットは魚(金魚)や小鳥(ジュウシマツ)、次いで犬であり、ペットショップにネコが登場するのもこのころらしい。そしていまは「空前のネコブーム」の時代らしい。
ネコに関する団体にもいろいろ紆余曲折・集合離散があり、「ネコの日」もかつてはいろいろな日があったようだ(現在は2月22日)。
まあ、ネコは適当につきあえるので気が楽。こちらも退屈しているときにちょっかいを出すし、向こうも餌やブラッシングを要求するときに寄ってくるという関係ですむので。
2021年7月記