満州国

満州国 鈴木貞美 平凡社新書 ISBN978-4-582-85976-6 1,000円 2021年2月

 筆者の専門は文学であるためか、満州に関係した文学関係者について詳しい。だが正直、彼らにはあまり興味がない。あとさらに、満州に関係した科学者たち(おもに京大学派、あと地質学者たちも)の専門での業績を評価しているが、これはどうだろう。さらに、この本では触れられていないが、戦後の彼らの影響力に対しては疑問に思っている。

 もちろん、満州国の裏で活動した日本の当時の高級官僚も、戦後に再び日本でも大物政治家として跋扈してきた事実、岸信介や大平正芳、椎名悦三郎たちもいたので、科学界ばかりの話ではないが。

 でもこれまで、満鉄(とりわけパシナと調査部)とか、731部隊とか、個人では甘粕正彦とかに偏っていた自分の満州に対する興味ばかりではなく、満州国の歴史・社会が網羅的に書かれているので、満州国全体を把握できる本だと思う。

 そしてこれまでの満州国に対する自分の考え、すなわち関東軍(石原莞爾や板垣征士郎たち幹部)の、情勢分析も展望もない、また起こした事柄(ノモンハン事件とか、張作霖暗殺とか)に対する評価もない、まさに”拙速”第一、その場その場の思いつきで、満州国でっち上げに走っただろうというものは、だいたい合っていたようだ。

 なので、本当はなぜそうなってしまったのだろうという考察も必要だと思うが、これは読者側の責任も大きいのかもしれない。

※ 目次は裏表紙帯を参照。

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2021年3月記

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