海獣学者、クジラを解剖する 田島木綿子 山と渓谷社 ISBN978-4-635-06295-4 1,870円 2021年8月
筆者は国立科学博物館の研究員。海獣とは鯨類、海牛類(ジュゴン、マナティ)、鰭脚類(アシカ、オットセイ、アザラシ、セイウチ)のこと。
この本は、クジラについての知見を、順序立てて解説するというものではなく(もちろん解説もある)、クジラが打ち上げられた(ストランディング)という情報が入れば、その自治体にまず連絡を取り(粗大ゴミとして処理されないように)、チームを組んで(場合によっては水族館人たちとも協力して)、急いで現地に向かわなくてならない。標本を集めることが、博物館としてのまずやるべき仕事。こういう、国立科学博物館研究員としての仕事の紹介がメイン。連絡が入れば、いつでも現地に駆けつけるという、東奔西走の毎日を、ある意味面白おかしく語っている。
でも、解剖といっても相手は巨体なので、体力勝負。実際にクジラの解体を見たことがあるが(※)、それは施設が整った解体場。何もない浜辺では大変だと思う。腐敗が進まないうちに作業してもどうしても残る臭いもあるし。
この本でも、ストランディングの章があり、いくつかの説が述べられているが、まだ詳細はわかっていないようだ。もう一つ、シャチがヒトを襲わないのも不思議に思っている。あの狩りの名手、場合によってはシロナガスクジラも襲う、また南米では海岸でオタリアを狩る、でもヒトは襲わない。まあ、シャチが好む低温の海に、人があまり入らないこともあるのだろうが。
※ クジラの解体動画(閲覧注意)
https://youtu.be/eN5Vc0Dkgi0。
2021年8月記