古代日本の官僚

古代日本の官僚 虎尾達哉 中公新書 ISBN978-4-12-102636-1 840円 2021年3月

 ここでいう官僚は身分の低い官僚、「平安男子の元気な!生活」に描かれていた貴族(官僚)は五位(昇殿を許される最下位の位((天皇に直接会える位)、ゴイサギも天皇に直接会える正五位の位を与えられたというのが名の由来)以上の高級官僚。仕事に励めば出世もあり得る彼らと違い、この本で描かれているのは五位よりも下位の官僚、一生懸命仕事をしても出世は限られている。ただ俸給さえもらえればいいという姿勢。裏表紙の帯にあるように、遅刻、欠席(代返もあり)、職務放棄ばかりか、儀式は欠席しているのに、儀式の後の会食会(「「共食」の社会史」によると身分秩序の確認の場)にのこのこと顔を出し、そのときにもらえる節録(引き出物、実質賞与)だけが目的だという。どうも、「共食」もまた別な視点での見直しも必要なようだ。

 また、社会(管理側)もこうしたことに対してきわめて甘い、というよりも改善のしようがなかったようだ。この本では、帝政中国の一糸乱れぬ官僚統制と、それに従う官僚とあるが、実態はどうだったのだろう。庶民に対して大きな権力を持っていた、中央政府の官僚のなかには、それを笠に着て不正を働くものが少なからずいたようだが…。まあ、ラストエンペラーで皇帝の前に並ぶ官僚たちとは、日本の古代官僚は皇帝・天皇に対する畏敬(恐怖)の感覚が違っていたのは確かなようだ。

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2021年6月記

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