古代文明と星空の謎 渡部潤一 ちくまプリマーブックス ISBN978-4-480-68407-3 840円 2021年8月
よくある古代天文学(古代文明)は現代天文学を凌ぐほどすごかったという本ではなく、その意味と限界をきちんと解説している。オーパーツファンはがっかり?
子供のころ、古代エジプト文明はすごく、ピラミッドはきちんと東西南北に底辺の各辺を置いている、そればかりか玄室に開いた穴から覗くと、1年の決まったある日のあるとき、その穴からシリウスが見えるように作られているという話をきいたことがある。でも、歳差のことを知るようになると、本当かなとおもうようになった。地球上で南北は(地軸が固定地球に対して移動しなければ)いつの時代でも変わらないが、真北に見える星(例えば現在ではほぼ真北に北極星)、過去には違っていたはず、だから、シリウス云々はおかしいと思った。
一時騒がれたマヤの暦の解説もある。マヤ暦によると2021年に地球は滅びるとかいうもの。これはもちろん噴飯物だが、その章に金星の明かりでも影ができるとか、天の川でもできるとかあった。すごく夜が暗くなる意図ころでないと無理だろうが(天の川は見るのも難しい)、チャンスがあれば試してみたい。
ポリネシアの航海者たちが星を頼りに、方角を決める方法の解説もある。ポリネシアの末裔にはまだその航法が伝わっているらしく、近代航法を用いずにポリネシアの島々の間ばかりか、2007年には日本にも訪れたという。知らなかった。
日本の7世紀末〜8世紀初のキトラ古文の天文図について、どこの空でいつのものかをどう推定したのかという解説もある。原図は西暦300年±90年、北緯33.9 °±0.7 °という(経度はわからない)。だれかが天文図を持ち込んだが、日本では実際の観測は行われておらず、3000年以上前、異国のものをそのまま使ったことになる。
目次
この本の目次
第1章 巨石文化は何を示しているのか?(ストーンヘンジは天文学の事象を予測していた?
遺跡を科学的に考察するための天文知識 ほか)
第2章 太陽信仰とピラミッド(ピラミッドはどこを向いているか
暦はどうして生まれたのか ほか)
第3章 暦とマヤ文明(ピラミッドが暦をあらわしている
天体観測をしていた!)
第4章 広大な海とポリネシア(海を渡るために発展したポリネシアの天文学
星にまつわる物語)
第5章 世界最古の天文図、キトラ古墳(日本の古天文学はどうなっているか
キトラ古墳に描かれた星図はいつのもの?)
2021年10月記