インド洋

インド洋 蒲生俊敬 講談社ブルーバックス ISBN978-4-06-524696-2 1,000円 2021年8月

 筆者の専門が化学なので、インド洋の海水についての話が中心かと思ったが、総合的なインド洋の解説。何しろ数回インド洋調査船に乗り(主な目的は熱水噴出口の発見)、同乗した他の分野の人々とも共同作業などを通じて会話をするようになれば、それが一見他愛のない話しでも、自然と他の分野の話も耳に入る。これは、大学や研究所にいるということの大変なメリットだと思う。

※ ソマリア海賊が横行していたころは、その付近の海域の調査は緊張したらしい。

 限りある潜水調査、1回目は“しんかい6500”で実際に海に潜り、2回目は“かいこう”(無人・ケーブルで母船と接続)で遠隔観察、ようやくインド洋で初めての熱水噴出口の発見に至る。
 熱水噴出口の生物群で不思議。それほど長くは続かないだろう個々の噴出口の活動が終わったら、そこの生態家は全滅。でも、同じような生態系が世界のいろいろな海で見つかっているので、ともかく卵をたくさん撒いて、その中で運良く活動している噴出口が見つかったらそこに定着というサイクルを繰り返しているのでしょうが。

 当然、インド洋の気象が日本の気象に繋がっているというテレ・コネクションの話も出てくる。それは東回りと西回り(大西洋経由)の両方があるという。つまり、因果関係がくるくる回っているわけで、要するに世界は一つ、シームレスということになる。

 あと、インド洋の三つの海嶺が一点に集まるロドリゲス三重点(トリプルジャンクション)。世界唯一とあったので、えっ、日本にもあるじゃないとなりました。でも、日本にあるのは陸陸海と海海陸のトリプルジャンクションでした

 

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2021年10月記

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