液体

液体 マーク・ミーオドヴニク 松井信彦訳 インターシフト ISBN978-4-7726-9572-5 2,200円 2021年4月

 筆者はロンドン大学ユニバーシティ・カレッジの[材料と社会」の教授。国際会議のために、ロンドンからサンフランシスコに飛ぶ飛行機の中(エコノミー席)で、インスパイアされたもの、たとえば航空燃料(ケロシン)に始まり、提供されるアルコール類、食事、さらにはトイレなどで液体について思い、考えたことを科学的に解説する。具体的な内容は目次を参照。

 こうしたたぐいの本は、日本なら先生−生徒や親−子の会話で進みそう。つまり子供が出した疑問を先生や親が答えていく形式。この本ではまるで日本の私小説みたいに、隣席の女性(最後に衝撃の正体)の目を気にしながら、筆者が起こす些細な行動とうじうじした思いを軸に話が進んでいく。

 ロンドン−サンフランシスコの飛行時間は約11時間ということだから、寝たりボーッとしたりしないで(少しはウトウトして隣席の女性に寄りかかってしまったことはあるみたいです)、1時間に一つ以上のテーマを考えていたことになる。飛行機に乗っても、チコちゃんがいたら怒られそうな、いつも通りの自分とは大違い。でも、実際に隣席にぶつぶつものをいいながら何かをしている人がいたり、あるいはトイレの長時間占拠などされたら、ちょっと気持ち悪いし、また迷惑だけど、”お話”だからいいか

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目次
はじめに 不可解で謎めいた性質
第1章 爆発……現代の魔法のランプに乗って
ケロシンの発見/進歩するオイルランプ/魔人が出てきた/ガソリンとディーゼル油のあいだに/
途方もないパワーでも爆発しない燃料
第2章 陶酔……アルコールの風味と毒に魅せられる
エタノールと極性分子/メタノールの悲劇/
ワインの味わいとマランゴニ効果/風味が視覚に左右されるわけ
第3章 深遠……水の振動と波の凄いエネルギー
エウレカ!/水の高い熱容量/死の冷たい手/
サーフィンの科学/津波の力
第4章 粘着……モノをくっつけて文明は進化した
石器時代の接着剤/イカロスの墜落/20世紀の文化を変える/
飛行機も家具も美しい合板で/炭素繊維複合材料の時代へ
第5章 幻想……オスカー・ワイルドの夢をかなえた液晶
動く肖像画/液晶は偏光を変える/
デジタル腕時計からディスプレイへ/機内で観る映画はなぜ泣ける?
第6章 本能……健康に欠かせない体液が嫌がられるわけ
唾液腺のありがたさ/どろりとした液体/
セックスと嫌悪感/情緒性の涙に含まれるホルモン
第7章 一服……最高においしいコーヒー・紅茶を味わう
紅茶はどんな味であるべきか/味を決める4つの要因/
ミルクはいつカップに加える?/コーヒーの大問題/ジレンマを回避する
第8章 洗浄……液体石けんはアイデアの宝庫だ
奇跡の物質/臭くて汚かったヨーロッパ/新タイプの界面活性剤/
シャンプーの成分表示に注目!/液体石けんと絶滅危惧種
第9章 冷却……冷蔵庫から人工血液まで
アインシュタインも挑んだ冷蔵庫革命/安全な冷却を実現?/
液体冷媒と乱流/液体呼吸
第10章 不滅……ボールペンを生んだ液体工学の天才
古代エジプトのペン/インクの流れをいかに制御するか/
多重最適化問題と非ニュートン流動/社会への大きな影響
第11章 曇天……上唇の水分子から放電する稲妻へ
機内で落雷に遭うことは?/雲の種をまく/水は管理が難しい/
積乱雲はいかに電荷を蓄えるか/霧のサンフランシスコ
第12章 溶融……流動する液体の星の上に暮らして
固体なのに液体のような「クリープ」/北と南、どちらの氷が先に溶ける?/ 
あやうく命を落としかけた場所/地球の山々が盛り上がらなかった理由
第13章 持続……都市を自己修復するテクノロジー
道路の寿命を延ばすには?/アスファルトの3Dプリンティング/
ウォーターフットプリントを減らすために/持続可能なプラスチック液化
おわりに 人類の未来と液体の力

2021年6月記

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