電線鳥類学 三上修 岩波科学ライブラリー298 1,300円 2020年11月(2021年1月第2刷)
面白いところに目をつけたと思う。でもまだ"学”のレベルには達していないと思う。とりあえずは個別事例を、できるだけたくさん集めることが肝要かと。
この本の、鳥が電線に止まるようになって100年程度、もし今後電線の地中化が進めば、電線に止まる鳥がいなくなるので(止まることができなくなるので)、電線に止まるということは、鳥の歴史の中のわずかな一コマにしか過ぎなくなるという筆者の言葉には、なるほどと思った。
当然、電線に止まる鳥はなぜ感電しないのかという、定番の問いにも答えようとしている。確かに。厳密な説明を簡単にしようとすると難しいと思った。ネットで見ると、おもに電圧で説明するものと、抵抗で説明する二つの流派があるようだ。この本では、両方の立場とも説明しようとしている。
自宅近くの電信柱の支柱カバーの中で、シジュウカラが子育てをしているのを見て、こんな所にも巣を作るんだと感心したことがある。でも巣立ちは確認できませんでした。あと、神代植物公園近くの電線に、たぶん鳥よけと思われるもの(とげとげではない)をつけている部分があるが、効果はあるのだろうか。または別な目的なのだろうか。
目次
まえがき
1 電柱と電線の基礎知識
電線――有線でインフラを引く/3人に1本の電柱/電線がバラバラなのは/上は電力線、下は通信線/架空地線、そして変圧器/送電と配電――町まで送ってから配る/3種の電柱/電信柱は高くない/腕金と碍子/誰かに話したくなるけれど、やめたほうがいい電柱のあれこれ
【コラム】 電柱と日常、非日常
2 鳥、電線に止まる
電線に止まる鳥たち/止まるかどうかを決めるもの/よく止まる鳥ベスト10/2種のカラスたち/上に止まる? 下に止まる? それとも……/真ん中派? はじっこ派?/スズメは中央、カラスは上の端/電線に止まるということ/電線で待ち合わせ/カラス、電線で遊ぶ/頭寒足熱仮説
【コラム】 歌詞のなかのスズメと電柱
3 感電しない鳥たち
よくある疑問/感電が危険な理由/スズメに電気は流れているのか/水流と樋で考える/またぐな危険!/ちょっと危ない送電線
【コラム】 まがい物の説明の功罪
4 鳥、電柱に巣を作る
巣はゆりかご/鳥の巣のいろいろ/@あいている穴を巣とする――穴があったら入りたい/穴があったら塞ぎたい/中は暑くないの?/他にもあるいろいろな穴/A穴をあける――あいてないなら、あけてしまえばいいじゃない/B巣を載せる/カラスの営巣はいつから?/電柱にはハシボソガラス/カササギ――古参は電柱に、新参者は木の上に/コウノトリ――見守られる巣作り
【コラム】 はみだした話題たち
5 電力会社、鳥と闘う
鳥による停電はどのくらい?/カラスの巣の撤去作業/営巣妨害装置に効果はあるのか/いたちごっこを避けるには/優しさが仇となるかも/闘いから共存へ
エピローグ 電柱鳥類学の将来
無電柱化進行中/その後の世界
あとがき
参考文献
引用文献
書評情報
2021年3月記