中国・アメリカ 謎SF 柴田元幸・小島敬太 白水社 ISBN978-4-560-09799-1 2,000円 2021年2月
SF好きの二人、年もかなり離れた二人が、柴田の方がアメリカ、小島の方が中国の、まだほとんど作品が発表されていない、つまりまだほとんど世の中では知られていない作家の作品を紹介する。全7編、中国が4、アメリカが3の短編が収められている。
短編なので、壮大なストーリーはないが、その分アイデア勝負という感じ。最後まで読んでも、意味のわからないものもある(面白くないという意味ではない)。
中国のものが4編(うち同一作者が2つ)、三人の作者のうちの二人は欧米の大学を出ている。つまり、西欧社会を身をもって体験しているわけで、中国の現状をどう思っているのだろう。
アメリカの方は3人とも女性、一人は素粒子物理学者、もう一人は考古学者(遺跡発掘などではない)という。
「マーおばさん」 マシンに砂糖を投入することで起動するAIコンピュータ。人格があるようなそのマシンのCPUは。
「曖昧機械−試験問題」3つの不可思議な装置(?)の発明者(発見者)とその体験3つが、全体として試験問題になっているというもの。
「焼き肉プラネット」 ワープに失敗して不時着した惑星は、焼き肉だらけ。でも食べようとして宇宙服脱いだら、この過酷な環境では死んでしまう。そもそもこの惑星は何?
「深海巨大症」 深海にいる(かもしれない)海修道士を探索に、深海めがけて潜水する正体不明な潜水艦。それに乗り組んだ様々な分野の研究者。海修道士は居るのだろうか。
「改良人間」 不治の病を直す方法が見つかる未来に期待して冬眠した主人公。起きた時代で期待されたことは?
「降下物」 最終戦争(?)後の未来に来てしまった。彼女のために、ポッド(タイムマシン)が用意されていた。彼女はどうするか。
「猫が夜中に集まる理由」 猫の集会は大変な意味を持っていた。すなわち誰かが(猫です)、この宇宙のエントロピーを少しでも減らすために”シュレーディンガーの猫”になるのだ。そして、飼い猫ミィーがとうとう。われわれの宇宙は猫によって守られ・維持されていた。
2021年3月記