鳥獣戯画のすべて

鳥獣戯画のすべて 上野憲示監修 宝島社 ISBN978-4-299-00481-9 1,600円 2021年3月

 この4月13日(火)から国立博物館で特別展が開催されるのに合わせて、類書が何冊か出ている。この本では甲乙丙丁全巻の全部ばかりか、復元版もが収録されているが、少し絵が小さいのが残念。

 最大の謎は、誰が、何のために描いたか(描かせたか)だが、もちろんこの本でその回答が得られるわけではない。平安から鎌倉時代にかけての複数に分かれて描かれた、現存するものは欠落があり、後の時代の修復を受けている、その際張り間違えた箇所もあるなど。それは残念なことだけど、それでも魅力が失われているわけではない。

 4巻のうちやはり一番面白い・魅力的なのは甲巻だ。ウサギとカエルをメインに、サルやキツネ(自分の尻尾を松明がわりにしているものなど)、ネコも一瞬登場。しかしこれら擬人化された動物たちと違い、シカ(馬の代わり)とイノシシ(僧侶へ貢ぎもの、僧侶には禁断のはず?)、あとミミズクはそのまま動物として登場する。

 一番登場が多いのはウサギだ。サルと水泳したり運動会したり、碁(バックギャモン?)を打ったり、そしてカエルとも、射的をしたり、相撲を取ったり、投げ飛ばされたウサギも楽しそう。最後にサルとの間でトラブルがあったのだろうか、ウサギがサルを追いかけたり、カエルが倒れていたり。そして一番最後の絵は岩陰から出てきたヘビ、これで楽しい遊びの時間は終わりになる。

 乙巻は動物スケッチ(実在と空想)、丙巻は人物と動物、丁巻は人物、これらにもそれぞれの面白さがある。

 本当は国立博物館の特別展に行きたいところだが、このコロナ禍が一段落しないと、なかなか決心できない。
https://chojugiga2020.exhibit.jp/

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2021年4月記

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