爆発する宇宙

爆発する宇宙 戸谷友則 講談社ブルーバックス ISBN978-4-06524084-7 1,000円 2021年6月

「宇宙は爆発だ!」ということで、超新星爆発や、それよりも桁違いのエネルギーを出すガンマ線バースト、さらには高速電波バーストなども紹介、それぞれのメカニズムをを考察する。

 さらに重元素(宇宙では二つの意味があり、ヘリウムより重い元素(恒星内部で作られる)を指す場合と、通常の核融合反応では生成されない鉄より重い元素の場合)がどこで作られるのかについて、たまたま見た2018年の大学入試センター試験の問題で、正解と思われる選択肢が、「超新星爆発によって、鉄よりも重い元素がつくられた。」であることに違和感を覚えたともあった。高校地学の教科書ではそうなので仕方ないが、最新の知見では、筆者も絡む連星中性子星の合体説の方が、そのときに発する重力波の観測からより有力になっったからという。ただ、実際はこうした新しい知見が高校教科書に載るにはタイムラグがかなりある。難しいところ。

 たぶん見られる機会はないだろうということになったベテルギウスの超新星爆発は、ガンマ線バーストはたぶん起こさないだろうが、もし起こしたとしてもガンマ線が放出される方向が限られるので、地球には影響がないだろうということだ。でも、もしそれが地球に向いた方向だとしたら、地球が浴びるエネルギーは10^22J程度、白亜紀末のいん石衝突の1/60程度(2011年東北地方太平洋沖地震の1万倍程度)なので、少なからぬ影響があるだろうという。

 あと、最初の方にかつては「ハッブルの法則」と呼ばれていたものが、現在では「ルメートル・ハッブルの法則」になったその経緯と、2018年の国際天文連合での評決も出ている。約1万の会員のうち賛否に加わったもの約4割(筆者は採決に参加せず)、法則名の変更に賛成78%、反対20%、棄権2%だったという。我々の世代にはなじみ深いカール・セーガンの「コスモス」ではもう一人、ミルトン・ヒューメインがクローズアップされていたが、まあ“観測助手”なので法則名にならないのは仕方ないか。

 最後に、なぜ我々がこの宇宙に存在しているのか、たとえば我々太陽系の近傍の恒星が超新星爆発を起こす(つまり惑星表面の生命の存続の危機)間隔が、生命誕生から人類の登場までの期間にほぼ等しいという偶然がある。こうした宇宙が存在する確率を考えると、筆者はあまり与したくない人間原理、我々観測者が宇宙を観測している、その観測者が登場できるうまい条件(アインシュタイン方程式の宇宙定数Λの値がそうなっている)である宇宙が、(いくつもある宇宙の中で)この宇宙なのだという考えもとらざるを得ないかとなっている。

 目次は裏表紙の帯参照。

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2021年7月記

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