私たちが、地球に住めなくなる前に マーティン・リース 塩原通緒訳 作品社 ISBN978-4-86218-777-8 2,000円 2019年11月
帯にあるような衝撃的な本ではなく、知っている人にとっては当たり前のことがたんたんと書かれている。未来に対する行動での一番のネックは、この本の第1章でも書かれているように、「長期的な目標は、政治課題からこぼれやすい。」ということだろう。政治家にとっては、「やるべきことはわかってる、だがそれをやったあとにどうしたら再選してもらえるのかがわからないのだ。」ということなのだろう。つまり、支持基盤である有権者(大衆)が長期的な目標を掲げる政治家よりも、短期的に効果が出そうな目標を掲げる政治家を選んでしまいがち。朝四暮三を喜んだ狙と変わらない。
もっとも長期的な見通しは、曖昧なことが多い、また意見が対立するものがある、なので素人はもちろん、プロ(学者であれ経済人であれ政治家であれ)でも明確なビジョンを建てられないことが多いのだろう。この本の基調は科学が解決できる(エネルギーでは原子力が、食糧ではバイオテクノロジーが)という立場のようで、ここからすでにいろいろな異見が出てくだろう。
あと、「神」の問題も出てくる。欧米人にはまだ重い課題なのかもしれない。
科学界全体の老齢化、つまり若い人が活躍できる場がないということは、日本ばかりではなく、この本では英米も同じような状態になっていることが指摘されていて、これは世界的な問題だと思った。
いずれにしても、この本で再三書かれているように、とりあえずの喫緊の問題は、世界的に広がる経済的な格差の解消だと思う。(自分は大金持ちのくせに)それを利用して対立を煽り、政治的権力を奪取・維持しようとする政治家も増えているようだ。
目次
まえがき
第1章 人新世の真っ只中で
第2章 地球での人類の未来
第3章 宇宙から見た人類
第4章 科学の限界と未来
第5章 結び
訳者あとがき
原注
索引
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2020年2月記