世界ことわざ比較辞典

世界ことわざ比較辞典 日本ことわざ文化学界編 時田昌端・山口政信監修 岩波書店 ISBN978-4-00-080321-2 3,400円 2020年3月

 取り上げられた日本語以外の言語・地域は、ヨーロッパ10、中央アメリカ1、アフリカ2、中近東2、南アジア2、東南アジア1、東アジア5、古典語2の25に及ぶ。なかでも、アフリカのチガ語(ギガ語)は、そもそもそういう言語があるのも知らなかった。ウガンダ、ルワンダなどの中央アフリカの民族が使う言語らしい。

 辞典なので、気になったときに見るものなのだろうが、とりあえずぱらぱらと見てみた。日本のことわざのルーツとなっている中国、その経路である韓国に似たものが多くあるのは当然だが、他の言語・地域でも似たものがあり、人間の思考の同一性がわかる。だが、その表現には間接的なもの、直截なものと違いがあることも多く、またその地域にしかないものを題材にしたものもあり、こうしたところに文化の差が出てくるのかもしれない。

 ちなみに、1枚目(箱表紙)の右上の座布団ネコは、「井の中の蛙」のロシア語版「猫より強い猛獣はいない」。1枚目と2枚目(箱裏表紙)のフクロウは、「屋上屋を重ねる」の古典ギリシャ語版「アテネに梟(梟は女神アテナの聖鳥、アテネ市に梟を運んでも、すでに梟は居る)」。3枚目のカバー表紙でウェイターが「岩波書店」といっているが、この項は「笑う門には福来たる」で、フランスの「体にはワインを、魂には笑いを」。4枚目はカバー裏表紙の折り返しで、「二兎追うものは一兎も得ず」で、中国はもちろん他の言語・地域でも同じものが多いが、台湾では「亀を捕まえて鼈を逃がす」だそうだ。さらにチベットでは「二人の妻を持つ男は部屋の隅で泣く」というものになるらしい。5枚目は本体の表紙で、箱表紙右上のネコと同じ。この本の編集者たちは大のネコ好きで、「泣く猫と地頭には勝てない」、だからネコが最強だと思っているのかもしれない。

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2020年6記

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