三体 劉慈斤 大森望、光吉さくら、ワン・チャイ訳 早川書房 ISBN978-4-15-209870-2 1,900円 2019年7月(2019年10月第13刷)
日経サイエンス2020年3月号の特集が、<中国のSF「三体」の科学>だったので、この本が話題になっていることを知った。中国発のSF、テーマとしてはファーストコンタクト、題材は限定の場合しか解析的に解けない三体問題と量子通信。
冒頭は1967年、文化大革命時の紅衛兵内部のすさまじい武闘(内ゲバ)と、知識人(大学物理学教授)に対する壮絶な批判大会(結局その場で殺される)。その娘(葉文潔(イエ・ウェンジェ)、物理学者)も反革命分子の子供ということで僻地に飛ばされたが、秘密の研究を行っている、外部との接触がない組織にスカウトされる。そこで葉文潔が行った行動(決断)がのち世界に大きな影響を与えることになる。
ときは一気に40数年飛んで2006年ころになる。なぜか基礎科学の研究者の自殺が相次いでいる。それを調べている世界的組織<科学フロンティ>にスカウトされた、基礎科学研究者ではなくナノマテリアルの開発者であるワン・ミャオ、彼と対照的にがさつで決して知識人ではない、でも勘は鋭い警官シー・チアン(汪)を軸に謎解きが始まる。
ワン()だけに見える(現れる)カウントダウンの数字。また、VRゲームで体験する三体の世界。登場人物は文革で殺された物理学者の娘葉文潔、さらにその娘で物理学者のの煬冬(ヤン・ドン)、そしてその周辺、つまり科学者が多い。
ついに姿を現した三体協会。その中の内部対立。
ミステリーの部分もあるので、紹介はこのへんまで。
三部作の第一部ということだが、これだけで300ページ超、この夏出版予定の第2部はこの1.5倍、さらに第3部はこの2倍の分量だという。
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2020年2月記