幸福な監視国家・中国 梶谷懐・高口康太 NHK出版新書 ISBN978-4-14-088595-6 850円 2019年8月(2020年2月第4刷)
巷の中国観、悲惨な監視国家(1984を体現している国)というイメージは間違っているという。それは、第1章の中の項「幸福を求め監視を受け入れる人々」とか、第3章「中国に出現した『お行儀のいい社会』」という面があるということらしい。、“ふつう”に生活していれば、つまりローンはきちんと返済し、交通ルールを守っていたりすれば、その人の“持ち点”が上がっていろいろなメリットを受けることができるようになる。逆にこれらができていないと、“持ち点”が下がって列車の1等席が取れなくなったりとこ、細かい日常生活でのデメリットがあり、進んで監視を受け入れ、個人情報を提供するようになっている。
とはいっても絶対にダメなのは、政府(共産党)批判、これをネットなどで表明しようとするのはもちろん、ネットで検索するのも御法度。ただ、ネット検索については、直ちに遮断ということではなく、繋がりにくくする、そのうちに面倒になってあきらめさせるということも多いようだ。こうしたIT技術は民間会社が技術か初してきたとはいえ、また建前としては政府とは独立ということになっているが、最終的には政府の協力せざるを得ない状況にある。
だが、筆者たちの考えとは逆に、新疆ウイグル自治区で行われていること、あるいは香港で行われていることを見ると、やはり高度なIT技術を、個人の自由を奪う形で利用している現実がある。さらに(中国から見た外国に住んでいる)外国人でも、うっかり中国(北京政府)の香港政策を批判したりすると、(中国(香港など)をトランジットで通過する際でも)逮捕される可能性もある(香港国家安全維持法第38条)。facebookのようなSNSでも監視できる技術はあるだろうから気をつけないと、ってもう遅いけど。
もっとも、上に書いたようなことは、どの国も可能であり、ファーウェイの責任者がカナダで逮捕とかもあった。中国の制度が怖いのは、その法の適用が恣意的、基準がよくわからない、というところにあると思う。忖度させるという(身をすくませる)、どこかの国で行われていることでもあるが…。
と、中国を批判的に見てきたが、じつは中国以外の日本を含む国々の多くの人々(自分自身を含めて)では、いわゆるGAFAに個人情報を進んで提供し、そのポイントを稼ぐということをやっているので、じつは同じようなことかも知れない。
※ 目次は裏表紙の帯参照
2021年1月記