感染症の日本史

感染症の日本史 磯田道史 文春新書 ISBN978-4-16-661279-6 800円 2020年9月


 人気歴史家が急遽まとめた本。この本の特徴は、疫病の流行に遭遇した個人(とくに庶民)がどう対応し、また罹患した場合はどう対処したのかに焦点を当てようとしていることにある。もう少し幅広くは、社会状況・経済状況も。残念ながら、この本では、庶民(といってもかなりの上流階級)としては京都の大きなお寺のお嬢さん(12歳の中学生)の日記から、その家族(広島からやってきた祖父を含めて)の様子が紹介されているだけである。その他の個人は政治家(原敬)であったり、文人(志賀直哉、永井荷風たち)であったりと有名人であるが、資料が少ないだろうからやむを得ないだろう。


 筆者は歴史から教訓を読み取ろうとしているが、江戸時代にも給付金があったとか、明治から三密を避けるということをやってきたという程度。あまり、直接的な教訓を読み取ろうと肩肘を張るのではなく、淡々と上のような個人の経験をもっと探し出した方が参考になるかもしれない。


目次
はじめに
第1章 人類史上最大の脅威
第2章 日本史の中の感染症 世界一の「衛生概念」のルーツ
第3章 江戸のパンデミックを読み解く
第4章 はしかが歴史を動かした
第5章 感染の波は何度も押し寄せる スペイン風邪百年目の教訓
第6章 患者史のすすめ 京都女学生の「感染日記」
第7章 皇帝も宰相も襲われた
第8章 文学者たちのスペイン風邪
第9章 歴史人口学は「命」の学問 わが師「速水融」のことども

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2020年10月記

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