考えるナメクジ

考えるナメクジ 松尾亮太 さくら舎 ISBN978-4-86581-245-9 1,500円 2020年5月

 何しろ、対ナメク使徒(ナメクジト)作戦を実施中なので、まず闘いの原則でありイロハのイでもある、“敵を知る”ために読んでみた。

 人の脳と比べて1/10万のニューロン(神経細胞)しかない小さな脳、それにも関わらず二つのことを結びつける「連合学習」ができ、またその記憶を最大2ヶ月ほど保持できるらしい。そればかりか、「2次条件付け」「ブロッキング」(内容は本文p.69〜70)という高度なものも。

 こうした能力があるがために、ジレンマに陥るという一人前(一ナメクジ前)のこともあるという。裏表紙の帯参照。

 人の目も心の窓といわれるが、ナメクジの触覚もまさに脳の延長らしく、記憶を担っているという。脳も触覚も損傷しても再生可能という能力を持っているが、再生した脳・触覚には記憶は伝わっていないという。このへんからは、iPS細胞による脳再生技術が進んでも、海馬が損傷した場合は海馬を再生できても記憶は再生できないだろうという、常識的な結論が予想できる。

 ただこの本からはまだ、ナメクジにコミュニケーション能力があるかどうかまでの研究は行われていないようだ。これがあると対ナメク使徒作戦も少しやっかいになるが、とりあえず個々ばらばらに行動しているという前提で対応しようと思う。

 この本の最後の章で、日本ばかりか海外でも数少ないだろうナメクジ研究者の愚痴というか誇りというか、不便なところというか、それがまた利点でもあるというかが書かれていて、誰もがやっていない分野の研究者を目指す若い人には参考になると思う。

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2020年6月記

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