人口の中国史

人口の中国史 上田信 岩波新書 ISBN978-4-00-431843-9 820円 2020年8月

 人口の動態から中国の歴史を眺める。中国の人口というもの自体、過去において大きく勢力範囲(中華帝国)が異なるので難しい。でも驚いたのは、なんとなく昔から中国は非常に多くの人口を抱えている、だから戦乱時になるとすぐに数十万人単位の兵が動くと思っていたが、人口爆発は18世紀以降、ここでようやく人口が1億人を超えたらしいとあり、まず驚いた。

 つまり、江戸時代の日本の人口3000万人台より確かに多いが、それでも圧倒的に多いわけではない。実際に漢民族に対して絶対的に人口が少ない少数民族の王朝もいくつかあり、最後の清王朝もそうだ。秀吉の明征服など全くの妄想かと思っていたが、それなりの現実味はあったのかもしれない。

 この本では中国近代人口史(つまり清以後)については書かれていない。中国の本当の人口爆発と一人っ子政策、さらに最近の人口政策も興味深い。天安門を埋める大群衆に感心した外国からの賓客が、周恩来に「すごいですね。」といったら、周恩来は「あれだけの人を食わせなくてはならないので、政治家は大変だ。」と答えたという。1950年代の政策の失敗で、多くの餓死者を出してしまった、これ自体政権の脅威になるので深刻に捉えていたのだろう。

目次
はしがき
序 章 人口史に何を聴くのか
第一章 人口史の始まり――先史時代から紀元後二世紀まで
第二章 人口のうねり――二世紀から一四世紀前半まで
第三章 人口統計の転換―― 一四世紀後半から一八世紀まで
第四章 人口急増の始まり―― 一八世紀
第五章 人口爆発はなぜ起きたのか――歴史人口学的な視点から
第六章 人口と叛乱―― 一九世紀
終 章 現代中国人口史のための序章
あとがき
参考文献リスト

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2020年10月記

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