デマの心理学 齊藤勇監修 宝島社 ISBN978-4-299-00663-9 1,000円 2020年7月
この種の本らしく、まだコロナウイルス騒動の最中なのに、これに関するデマも取り上げられている。その一つが「ウイルスは熱に弱い、57度の温度で死ぬ。だからお湯をたくさん飲めば予防できる。」というやつだ。2月末には自分の所にもやってきた。まともに対応するのはばかばかしい、でもどうも善意で拡散しているようだ、さらに信じている人もいる、始末に悪いなあと思っていた。
2011年東日本大震災のときも、「コスモ石油の爆発により、有害物質がまき散らされた。雨と一緒に降ってくるので絶対雨に濡れないように。」というチェーンメールを受け取ったことがある(この本でも取り上げられている)。
デマは、不安な状況、そして先が見えないときに、それを利用して流す人(最悪流す組織)がいる(ある)ということだ。この本では、これらのデマの特徴、そしてそれがなぜ安易に、そして素早く拡散するのか解説している。ただ、これは結果論。冷静な状態になれば直ちにデマだとわかる程度のものでしかない。でも残念ながらこの本は、不安な状況のときに入り乱れる多数の情報の中から、その真偽を見定めるためのノウハウ本ではない。というか、そうした方法はないのではないかと絶望的な気分にもなる。いちど、「陰謀論」(※)に苦労したことがあるので。
57℃のお湯を飲んでも(氷水は絶対に飲むなという付帯条件もついていましたが)、雨に濡れなくても(わざわざ濡れる人は少ないだろう、もっともこのときは「黒い雨が降る」という話だったと思う)、人体に害はないので、真偽を確かめようないところが味噌かもしれない。拡散善意(拡散意欲)をかき立てる。
※ アポロ疑惑や9.11貿易センタービル破壊など。今の某超大国大統領は自ら陰謀論を振りまいている、恐ろしい状態。
目次
はじめに 新型コロナという脅威で明らかになった群集心理
Prologue 「トイレットペーパーがなくなる」「コロナはお湯で治る」はなぜ広まった?
Chapter 1 人はなぜデマに踊らされるのか
Chapter 2 なぜデマは恐ろしい速さで伝播するのか
Chapter 3 都会では人はなぜ見て見ぬ振りをするのか
Chapter 4 集団はなぜおかしな方向に動くのか
おわりに 群集の心理はわかりやすく、単純なもの?
参考文献
2020年7月記