中古典のすすめ

中古典のすすめ 斎藤美奈子 紀伊國屋書店 ISBN978-4-314-01152 1,700円 2020年9月

 編集者も経験しただけあって、彼女の本は題名も、また個々の本の紹介のキャッチコピーも、それだけで引き付けられるものがある。この本の題名もそう、まだ“古典”にはなっていないが、もしかすると“古典”になるかもしれない、1960年代〜90年代の本48冊をまな板に載せる。

 最低な男を正当化する弁明の書「私が・棄てた・女」(遠藤周作)、どこが名著かわからない「タテ社会の人間関係」(中根千枝)、幼児的依存を体現した書「『甘え』の構造」(土居健郎)、まるで酔った上司のお説教「気くばりのすすめ」(鈴木健二」、不倫にのめった中年男の夢と無恥「ひとひらの雪」(渡辺純一)、ポストモダンって何だったの「構造と力」(浅田彰)、過剰な「性愛と死」があなたを癒やす「ノルウェーの森」(村上春樹)、バブル期日本の過信と誤謬「NOと言える日本」(盛田昭夫・石原慎太郎)、利用された自尊史観「この国のかたち」(司馬遼太郎)、バブル崩壊期の典雅な寝言「清貧の思想」(中野孝次)などなど。

 ここに挙げられたその時期ごとのベストセラーは、ほとんど読んだことがないことを、改めて認識した。でも、この本には、三つ星を満点とする名作度と使える度という評価があるので、それを頼りに少し読んでみようかという気になる。紹介がうまいので。

 山崎豊子の「白い巨塔」も紹介されている。原作もTVドラマも見たことはない。でも、悪玉の主人公財前五郎は続編でさらに、学術会議選を目指し当選したとあった(当時は公選制)。やはり学術会議は当時(1965年)から、上方指向の人にとっては目標のポストだったようだ。

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2020年10月記

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