地磁気逆転とチバニアン

地磁気逆転と「チバニアン」 菅沼悠介 講談社ブルーバックス ISBN978-4-06-519243-6 1,100円 2020年3月

 話題(?)のチバニアン解説本。地質時代の区分は代(新生代など)、紀(第4紀など)、世(更新世など)とだんだん細かくなり、世の下の区分として期がある。その期の世界的模式地層(国際境界模式層断面とポイント、Blobal Boundary Stratotype Section and Point(

GSSP))として、千葉県市原市の養老川の地層が選ばれ、77.4万年前〜12.9万年前の時代を正式に「チバニアン(チバ期?)」という名称が決まった。その国際地質科学連合への提案書責任執筆者がこの本の筆者。ポイントは地磁気逆転の年代を、これまでよりも厳密に決めることができたこと。これによって、逆に地磁気逆転層から年代を厳密に決めることができるようになった。

 ということで、まず地磁気の解説に始まり、地球科学全般(とくにプレートテクトニクス)の解説もある。また、地磁気の逆転が繰り返し起きていたことを見つけた松山基範、それに先駆けて地磁気の逆転を発見したブルン(ブルンヌ)についてもページを割いている。

 ただ火山岩の熱残留磁気や堆積岩の残留磁気についての記述はあっさりしている。そのなかで、筆者が関わった堆積岩の残留磁気が、いつの時代の地球磁気を記録しているのかについては、ベリリウム10も用いた筆者の研究については当然詳しい。そして、この厳密な考証がチバニアン公認へと繋がる。その喜びも書かれている。そして、この養老川沿いの地層の特殊性(利点)も。

 もちろんここに至る過程で生じた摩擦(妨害)にも少し触れられている。当初は共同で提案していたはずの古関東深海盆ジオパーク推進協議会(この本では少しぼやかしている)の会長が、反対にまわった経緯についてはこの本ではわからない(機会があれば別に明らかにするそう)。気になるのは、提案の基礎となる論文提出に際し、この団体(の会長?)から、プレートテクトニクスに関する部分の削除を求められたということだ。すぐに思い浮かぶのは、頑迷に反対していた○学○体研究会が絡んでいるのかなと思って少し会長の経歴を調べたら、1970年前に大阪市立大学理学部大学院を卒業していることがわかった。当時の大阪市立大学の地質学といえば藤田和夫氏で、氏はたしかに某団体の会員だったはずだが、同じ名字のN潟大学の人よりはるかに柔軟なだったはず。個人の考え(思想)として、プレートテクトニクスは受け入れられないのだろう(○学○体研究会の会員かどうかはわからない)。ただ、初めはすごく積極的で、露頭に通じる階段なども個人で設置したりしているので、直情径行的なところがある人なのかもしれない。

 いずれにしても、市原市や千葉県が期待するような盛り上がりはないだろう。見てもなんの変哲もない地層だから。それにつけても、日本地質学会からの反応がない(ホームーページには、この件について何も載っていない)のも不思議。

目次
第1章 磁石が指す先には 磁石と地磁気の発見
第2章 地磁気の起源 なぜ地球には磁場が存在するのか
第3章 地磁気逆転の発見 世界の常識を覆した学説
第4章 へんどうする「地磁気」 逆転の「前兆」はつかめるか
第5章 宇宙からの手紙 それが、謎を解くヒントだった
第6章 地磁気逆転の謎は解けるのか なぜ起きるのか、次はいつか
第7章 地磁気とチバニアン その地層が、地球史に名を刻むまで
おわりに
参考図書
ふろく 古地磁気学・岩石磁気学が研究できる大学・機関
さくいん

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2020年4月記

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